グレイ家の兄弟 THE MOVIE 「暴走中」
しばらく行くと、また誰かに会った。弟のロジャーだ。
「あ、何だ、ブライアン兄さん」
「おいおい、人の顔見て驚き過ぎだぞ」
「いや、ごめん…」
「別にいいよ。しかしこの建物、物騒な仕掛けが多いな」
「全くだ…。仕掛けもヤベェけど、もっとヤベェのがいるんだよ」
弟の話を聞いて、グレイ家の次男は、より深刻な顔をして言った。
「おまえもそう思うか。俺は妙な大男を1人見たが、どうも感じのいいやつじゃなさそうだ」
「じ、じゃあブライアン兄さん、俺の護衛してくんな…」
「断る」
そんな会話をしていると、ロジャーは何やら気配を感じ、後ろを振り向いた。すると、エクスキューショナーの1人がいるではないか!
「うわぁ、来るな〜〜!」
ブライアンとロジャーは猛ダッシュした。
途中で三つに分かれた道があった。
「ロジャー、俺は右に進む。おまえは自由に選べ!」
「お、おう、ブライアン兄さん!」
彼はしばらく走ると、先ほど通った、吹き矢を放つ5対の顔面レリーフの彫られたエリアに戻ってしまった。
「何っ!?ここ、さっき通ったところじゃねぇか!」
彼はすぐに引き返し、まだ通ったことのない通路を通った。すると、目の前にアメリがいた。
「あ、ブライアン」
「おぉ、アメリか」
「気を付けるのでス。私たちは何者かに追われていまス」
「あぁ、そのようだ。俺も妙な服装の男を2人ほど見た。で?フレディたちには会えたかい?」
「それが、私にも分からないでス。途中でロジャーには会ったのでスが…」
「俺も、ついさっきロジャーに会った」
とりあえず2人で手分けしてフレディたちを探すことにし、一度違う道を進んだ。
ところがどっこい、ブライアンの進行方向には1人のエクスキューショナーがいた。彼はブライアンの姿を見るや、こちらに向かって走ってきた。ブライアンはすぐに走り出したが、足はあまり速いほうではなく、疲れていたこともあり、ついにエクスキューショナーに片腕をつかまれた。
「うっ、何をする!おい離せ!」
エクスキューショナーは黙ったまま、ブライアンの片手に重そうな鉄の手錠をはめ、もう片方の手にも同じことをした。
「な、何すんだ、やめろ!」
黒い目出し頭巾の男はブライアンに黒い布で目隠しを施すと、その右腕の袖を強くつかんで歩いていった。
「やめろ、おまえら!離せ!離せ!」
不気味なエクスキューショナーは、より一層カビ臭い地下の一室に着くと、目隠しされたままのブライアンを絞首台に登らせ、黙って彼の首に縄を結んだ。
「えっ…!?」
既に捕まっていたアメリが、ブライアンの声に気付いた。
「もしかして、ブライアンでスか!?」
「みんな、悪い。不覚にも捕まっちまった」
「ブライアン兄さん、ついに捕まっちまったか…。俺たち、これからどうなるんだ…!?」
ロジャーが半泣きで言った。
「私まだ、30年も生きてないのに…」
ヒラリーも震えながら言った。しかしブライアンは冷静に言った。
「信じよう。フレディは、俺たちを必ず助けに来てくれる」
― 神殿内を回るエクスキューショナー10人のうち1人が消え、9人になった ―
― あと1人 ―
作品名:グレイ家の兄弟 THE MOVIE 「暴走中」 作家名:藍城 舞美