グレイ家の兄弟 THE MOVIE 「暴走中」
しばらく歩くと、後ろから何者かの足音がした。後ろを見ると、黒い目出し頭巾をかぶり、黒いタンクトップにグレーのスウェット風のズボンを履いた、1人のエクスキューショナーがいた。はっとしたアメリは、すぐに走った。走っている間、ある角を左に曲がると、かなり広い空間に入った。
そこには、どんな生物も一口で食べてしまいそうな1頭の大蛇がいた。それはアメリの姿を見ると、鎌首を上げてしゅーっと威嚇した。彼女は怯むことなくそれをにらんだ。大蛇は、大口を開けて彼女に襲いかかってきた。しかし彼女はひらりと逃げると、大蛇の頭上にジャンプした。彼女はそのまま大蛇の体の上に移動し、持ち前の身軽さを武器に、巨体のあちらこちらを飛び回った。ついに大蛇の体は絡まってしまい、苦しそうにのたうち回った。その有様を見て、アメリは鼻で一息ついた。そのとき、再び何者かの足音がした。彼女を追っていたエクスキューショナーが来たのだ。彼女は物陰にさっと身を隠した。自由に動けないイライラのためか、大蛇はエクスキューショナーを見るや、舌を伸ばして彼を捕らえ、そのまま口に入れてしまった。アメリは背筋がぞくっとして、目をきつくつぶった。
後方に注意を払いながらしばらく歩くと、ブライアンと出くわした。
「あ、ブライアン」
「おぉ、アメリか」
「気を付けるのでス。私たちは何者かに追われていまス」
「あぁ、そのようだ。俺も妙な服装の男を2人ほど見た。で?フレディたちには会えたかい?」
「それが、私にも分からないでス。途中でロジャーには会ったのでスが…」
「俺も、ついさっきロジャーに会った」
取りあえず2人で手分けしてフレディたちを探すことにし、一度違う道を進んだ。
後方に注意を払いながらしばらく進むと、切れ味のよさそうな三つの大きな斧が等間隔で吊るされ、振り子のように大きく揺れていた。あんな凶器が三つも続くと、タイミングよく通るのはかなり難しそうだ。渡るタイミングをはかっていると、後ろから誰かの足音がした。アメリは凶器を上手によけながら移動した。何とタイミングの悪いことか、前方からもエクスキューショナーが1人来た。アメリは焦った。すぐに引き返そうとしたが、三連の大斧の向こうには、既にもう1人のエクスキューショナーがいた。体に震えがきた。
ほどなく、彼女の前方にいたエクスキューショナーが彼女の腕をつかんだ。
(…!)
エクスキューショナーは彼女の右手に手錠をすると、すぐに左手にも手錠をした。
(…!!)
三連の斧の向こうにいたエクスキューショナーはそれらのトラップを偶然すり抜け、アメリの洋服の背中のほうをつかんだ。彼女に手錠をしたエクスキューショナーは、今度は黒い布で彼女に目隠しをした。こうして、アメリは地下室へと連行されていった。
2人のエクスキューショナーは、アメリを絞首台に登らせ、彼女の首に縄を付けた。
「…え、何を…」
最初に彼女の声に反応したのは、やはりジョンだった。
「あ、アメリ!?」
「ジョン!」
ヒラリーも彼女に話しかけた。
「やだ、アメリも捕まっちゃったの!?」
ロジャーも反応した。
「アメリもかよ…」
「ヒラリー、ロジャーも…。どうやら、彼らは私たちが全員集まりしだい、絞首刑にする気みたいでスね…」
― 神殿内を回るエクスキューショナー数人が消えたが、その人数はいつの間にか10人に増えた ―
― あと2人 ―
作品名:グレイ家の兄弟 THE MOVIE 「暴走中」 作家名:藍城 舞美