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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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グレイ家の兄弟 THE MOVIE 「暴走中」

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 しばらく歩くと、前方から何かが集団で走ってくるような音がかすかに聞こえたので、ロジャーは動きを止めた。
(確かにアメリの言ったとおり、俺たちのほかにも何か居るっぽいな…)
 そうは思いながらも、自分を落ち着かせるために、彼はバッグから1本のペットボトルを取り出した。その中身は、どこぞの会社のスポーツドリンクだ。彼はふたを開けて、音を立ててその飲料を飲んだ。

 水分補給をしていると、前方から大型のスカラベのような虫の大群がかなりの速度で走ってきた。ロジャーは飲んでいたものを派手に噴き出した。
「何かヤバそうなの来た!」
 一人でそう叫ぶと、四肢を大きく開いて電撃を放った。それらのほとんどは感電死したが、攻撃を逃れた1匹がロジャーの右足に噛みついた。彼はあわててその虫を離し、すかさず指から電撃を繰り出した。
「もうあいつらは来ねえな?」 
 虫が1匹もいなくなったのを確認すると、雷のエレメントの力を持つ武闘派男は、「ごくごくタイム」の続きを始めた。

 やがて再び出発すると、少し離れたところに黒い目出し頭巾をかぶった、黒いタンクトップの男がいた。エクスキューショナー(死刑執行人)の1人だ。ロジャーは、アメリの言ったことがやっと分かった気がした。
(うわ、何だあいつ。ヤバそうなナリしてるな)
 心の中でつぶやきながら様子を探っていると、黒い目出し頭巾と目が合ってしまった。彼は、ダッシュでこちらに迫って来た。
「うわ、こっち来んのかよ〜!」
 ロジャーはエクスキューショナーから逃げながら後ろを向き、片手を差し出して電気ショック攻撃を放った。それはばっちり命中し、エクスキューショナーは倒れた。
 こうして追っ手の1人を戦闘不能にしたロジャーは、二つに分かれた道のうち、右の通路を通った。数十メートル歩いても、何の仕掛けも作動せず、あの恐ろしいエクスキューショナーも来ない。

 しかし、彼の通っている隣の通路には、黒い目出し頭巾の大男が歩いていた。無論、ロジャーはそれに気付いていない。しばらく移動していたが、何の異変も起こらなかった。
「ここまで穏やかだと、何だか逆に不気味だぜ」
 ロジャーは一人でつぶやいた。やがて彼は、大きく口を開けた、大きな人面のレリーフの前で立ち止まった。
「あ、このレリーフ、すげぇな。口もでかいし」
 そのときだった。突然、レリーフの口の中からばねの付いたボクシンググローブがビヨンと飛び出してきた。俊敏なロジャーは、さっと身をかわした。
「ななな、何だ今のは」
 すると、向かい側の人面レリーフの口の中からも、ばね付きのボクシンググローブが勢いよく飛び出してきた。しかし、標的に当たらなかったため、グローブはすぐにへたりと下を向いた。ロジャーは何を思い付いたのか、その人面レリーフの近くまで行くと、果敢にもそれぞれのばねからグローブを外し、それらを自分のバッグに入れた。
 そのまま歩いていると、恐怖のエクスキューショナーにばったり会ってしまった。
「だ〜、出たぁ〜〜!」
 ロジャーは大慌てで走った。彼はG4の中で一番足が速い。追っ手との距離を50メートルほど離すと素早く角を曲がり、相手をまくった。

 暴走中のロジャーは、また誰かに会った。
「うわっ」
 よく見ると、次兄のブライアンだった。
「あ、何だ、ブライアン兄さん」
「おいおい、人の顔見て驚き過ぎだぞ」
「いや、ごめん…」
「別にいいよ。しかしこの建物、物騒な仕掛けが多いな」
「全くだ…。仕掛けもヤベェけど、もっとヤベェのがいるんだよ」
 弟の話を聞いて、グレイ家の次男は、より深刻な顔をして言った。
「おまえもそう思うか。俺は妙な大男を1人見たが、どうも感じのいいやつじゃなさそうだ」
「じ、じゃあブライアン兄さん、俺の護衛してくんな…」
「断る」
 そんな会話をしていると、ロジャーは何やら気配を感じ、後ろを振り向いた。すると、エクスキューショナーの1人がいるではないか!
「うわぁ、来るな〜〜!」
 ブライアンとロジャーは猛ダッシュした。

 途中で三つに分かれた道があった。
「ロジャー、俺は右に進む。おまえは自由に選べ!」
「お、おう、ブライアン兄さん!」
 ロジャーは真っすぐ進んだ。しかし、エクスキューショナーはかなり近い距離にいる。逃げ足の速いロジャーもさすがに疲れが出て、スピードが遅くなった。止まった直後、ロジャーはエクスキューショナーに腕をつかまれた。
「ああ〜、もうだめだぁ〜」
 エクスキューショナーはロジャーの右手に手錠をはめた。
「お、おい、俺が何したってんだ〜!?」
 彼はロジャーの左腕にも手錠をはめ、ポケットから黒い布を出すと、目隠しをした。
「わ、わ、前が見えねえっ!」
 一人パニックを起こすロジャー。エクスキューショナーは、彼の袖を強くつかみ、地下室へと連れていった。そこに入ると、ロジャーを絞首台の上まで連れていき、低めの木の台の上に彼を立たせ、彼の首に縄を結んだ。
「わ、おい、何すんだよ!!」

 すると、ジョンが兄の声に反応した。
「今度はロジャー兄さん?」
「そ、その声はジョン!」
「ロジャー兄さんも捕まったんだ…」
 ロジャーは不安そうな顔で、ジョンとヒラリーに尋ねた。
「なあ、いったい何なんだ?俺たち何か悪いことしたのか?」
 ヒラリーも言った。
「あたし、死ぬのやっぱり怖い!誰か助けて!」

― その頃、神殿内を回るエクスキューショナーが数人投入された ―


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