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ヒラリー編

　フレディが謎の神殿風の建物の中に消えて、ほかの者たちはちょうど５本あった松明を手に、手分けして彼を探すことにした。

　ヒラリーは、入口を通ってすぐのところにある、吹き抜けのほうを見た。そこには、大きくて太い２本の松明に挟まれ、巨大な祭壇が立っている。その下方に転がっている大量の人骨を目にして、彼女の顔は白くなった。彼女はその場を後にして一目散に走っていった。

　走っていくと、道が三つに分かれている。ヒラリーは少しの間悩んだが、右の道を進んだ。とことこと歩いていくと、彼女は何かにつまずいた。足元を見ると、何と人間の頭がい骨が転がっているではないか。
「きゃああ〜〜！！」
　彼女の悲鳴が神殿内にこだました……。


　ようやく落ち着いたヒラリーは、ため息を漏らして言った。
「な、何だ、ドクロか。ああ、びっくりした」
　彼女は再び歩き出した。左側の壁を照らすと、何か細いものがぬっと現れた。成人の全身ガイコツだ。
「いや〜！ガイコツ〜！！」
　彼女はあまりにも急いで走ったせいで、持っていた松明の火はふっと消えてしまった。壁沿いにも小さな松明があったおかげで、かろうじて足元には注意できた。

　長らく走っていたので、彼女は息切れした。
「ぜぇ、ぜぇ、私、ああいうのは怖いのよねぇ…」
　そう独り言を言うと、さっきよりも遅く歩き出した。歩いている途中、彼女は大型のスカラベのような虫の描かれた部分を、知らないうちに踏んだ。踏まれたところはボタンを押されたようにへこみ、彼女の足が離れると、再び元の位置に戻った。

　少し行くと、向こうから何かが群れをなして押し寄せてくる音がかすかに聞こえた。立ち止まって耳を澄ましていると、前方から大型のスカラベのような虫の大群がかなりの速度でこちらに向かってくる。ヒラリーは口をあんぐり開けたまま、猛ダッシュした。しばらく走って右に曲がると、目の前に、黒頭巾をかぶった、黒いタンクトップの男がいた。エクスキューショナー（死刑執行人）だ。彼はアジア系女性を見つけると、彼女の後を追った。もちろん、ヒラリーは来た道を引き返した。

　しかし不運にも、進行方向にはあの大スカラベの大群がいる。背に腹は代えられぬとでもいうのか、ヒラリーは思い切ってその大群の間を走っていった。大スカラベの何匹かを踏み潰しながら…。
「怖い、怖い！本当怖〜〜い！！！」
　驚いたことに、虫たちは自分に何もしてこない。恐る恐る後ろを見ると、何と追っ手が、着ていた服を残して骨になっていた。大スカラベたちは、そのままどこかへ進んでいった…。
「…！骨だけに…！！」
　青ざめたヒラリーは、そのまま猛ダッシュしながら、携帯電話を取り出し、ほかの仲間に危険を知らせようとした。しかし、当然、電波の圏外で、誰の携帯にもつながらなかった。
「みんな〜、どこ〜〜！？」

　しばらく迷走を続けると、彼女はまた別のエクスキューショナーに会ってしまった。慌てて引き返そうとしたが、既に疲れがたまっており、それほど速く走ることはできなかった。こうして、ヒラリーはエクスキューショナーの１人に捕らえられ、重い鉄の手錠をはめられた。
「え、ちょっと、何するのよ。ねえ、やめてよ！！本当、やめてってば！」
　エクスキューショナーは黙ってヒラリーに黒い布で目隠しをして、その服の袖を強くつかみ、地下室へと連れていった。そこに入ると、絞首台の上まで連れていき、彼女の首に縄を結んだ。
「もうやだ〜！これ、何とかの呪い〜〜！？」
　先に捕らえられているジョンが、彼女の声に気付いた。
「ヒラリー、君も捕らえられたのか」
「ジョン！ジョンも捕まったの？」
「ああ、このとおりだ」
「私たち、何でこんな目に？私、聞いてない…」
「本当に聞いてないよ」


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―　あと４人　―