NEVER-最初で最後の大犯罪-
「アリサはオレを見つけてしまった。だからオレはアリサの名前を聞いて、探し出して、誘拐した」
鐘宮はベッドの傍にある椅子に腰掛け、そう言った。
「意味分かんない。見つけたって、何が」
布団から起き上がって、私は聞く。
「――昨日オレは人を殺した」
そして私は、今朝見たばかりのニュースを思い出す。
(あの遺体発見現場って確か――私の町……)
できれば知りたくなかった。
もっとここにいることが怖くなった。
今すぐにでもできることなら脱出したい。
「気付かなかった?オレ、血が付いてたんだけど」
「――そういえば血生臭かったような気も……」
私が言うと、彼は「だろ?」と言って、更に話を進めた。
「アリサは殺人をしたばかりのオレを見付けた。それって、オレの目撃者って事じゃん」
「でもあの日は暗くて何も見えなかったし……」
必死で弁解する。
どうにか家に帰してもらえるように、遠回りに言って。
「そんなのオレにはわかんねーよ」
だがあっさりと弁解は破られてしまった。
そして、口調ががわりと変わった。
(この人、ほんと一体何者よ……)
心の中で溜息をついた。
「つまり自分が通報されるかもしれないと思って、保険として私を誘拐したんだ?」
「そういうこと。なんだ、話分かるんだ」
いつのまにかバカにされていた。
ニコニコ微笑みながら言う鐘宮に、一発パンチを入れたいところだが、生憎手錠と心の弱さにより不可能。
「私通報なんかしないよ。だから、誘拐なんて止めて」
「その話のどこに信憑性があるの?そんな話、オレは信じないね」
(なんつー理解力のないヤツ!!変な趣味しやがって!)
「じゃあさ、話変えるけどさ、この服何?!」
フリフリのスカートに、レースのついた袖口。
黒と白のコントラストに加え、淡いピンクのリボンが胸元にある。
まるでどこかのファンタジーに出てくるお姫さまのようなドレス。
「可愛いと思わない?」
「思わねえよ!」
ボスッ、と枕を投げつける。
だが空振り。
枕はあっけなく床に転げ落ちた。
そして後悔する。
(相手は殺人犯……どうしよう、殺される!)
「ご、ごめんなさ……」
「別に謝んなくていい」
どうしてだか分かんないけど、大して怒ってる様子もないのでそれに従うことにした。
作品名:NEVER-最初で最後の大犯罪- 作家名:*Mi