NEVER-最初で最後の大犯罪-
2話 誘拐
「ん……」
目を開けると、まず一番に白い天井にぶら下がるシャンデリアが目に入った。
(綺麗……なんだろ、ここ)
目を下げると、今度は壁掛け時計を見付けた。
繊細な模様が彫られている、木で出来た時計だった。
「わわっ!何これ!!」
更に目を下げて、私は驚く。
それは、自分が寝ている場所が真っ白くて広く大きなベッドだったからではない。
ふわふわの羽毛布団に包まれていたからでもない。
じゃあ何故か。
普通に暮らしてちゃ、まずご対面することはない――
手錠。
「きぃ!!取れないぃっ」
手とベッドを繋がれた手錠。
そこからなんとか抜け出そうと手を色々な形にしてみるが、結局どうもできなかった。
むしろ手が赤くなって痛々しい。
「むうぅ……まだ1回も休んでない高校生活が……遅刻ゼロの夢が……」
全部崩壊した。
そんな哀しみの余韻も程ほどにし、もう一度手錠と向き合う。
(とにかく、今はこれを何とかしないと!)
私が尚も手錠と格闘していると、ふいに部屋の大きな扉がゆっくりと重たそうに開いた。
「ぎゃっ!」
その出来事に、思いのほか驚きすぎて、女の子らしくない声を発してしまった自分を恥じる。
すると、部屋に嫌味なくすくす声が聞こえ渡った。
声の主は、扉を開けた少年だった。
「起床早々、色んな独り言喋って、愉快な人」
どこかで聞いた、甘く優しい声。
「貴方誰」
警戒して、ついでに睨みながら、ハッキリと強い口調で相手に問う。
「オレは鐘宮滝(カネミヤタキ)」
微笑む彼の表情は――怖かった。
笑ってるんだけど、笑っていないような……。
とにかく恐ろしいと思った。
私が、警戒心丸出しで目だけ見える状態でベッドの布団に覆いかぶさっていると、彼は軽快に笑った。
「もう忘れた?昨日会ったのに」
違う。あの人はこんなじゃなかった。
あの日ぶつかった彼は、こんなに冷たくなかった。
「知らない」
ぷい、と目を背ける。
すると、鐘宮と名乗った彼は、布団を剥ぎ取りこう言った。
「オレはキミを知ってる。アリサ」
ぞくっ、と鳥肌が総立ちして、ぶるっ、と体が身震いした。
名前を呼ばれただけ。それだけで、危険を感じる。
「どうしてこんな事したの」
尚も強気に向かうけど、もう既に心は折れかかっている。
作品名:NEVER-最初で最後の大犯罪- 作家名:*Mi