NEVER-最初で最後の大犯罪-
「まだまだ服はいっぱいあるから、好きなの着ていいよ!」
変わりにニコニコ笑顔付きの返答が返って来た。
(まだまだいっぱいある?女の子の服が?こいつほんと何)
引き笑いで頷いておいた。
なんとか彼の機嫌は損ねないで済んだようなので、私は本題に入った。
「それより、この手錠取ってくれない?」
「取ったら逃げる気だよね?」
あっさりと否定された。
だが私はめげなかった。
「逃げない。絶対逃げない!」
「その話のどこに信……」
「それはさっき聞いた!だから、信用できる物を作ったらいいのよ!」
慌てて話の最中に会話をかぶせた。
また信憑性がどうのこうのって言われるところだった。
危ない危ない。
「信用できるもの?」
相手が食いついた。
よっしゃ、と心の中で拳を握った。
「例えば約束とか」
私がその場しのぎの提案をする。
すると彼は少々悩んで、そして返答をくれた。
「――わかった。その手錠を外す」
「ほん――」
喜ぼうとした次の瞬間、鐘宮は悪魔の一言を足した。
「但し絶対に約束を破らないように、破った時の罰をつける」
「……どんな?」
くすっ、と彼は笑い、妙に嬉しそうな顔でこう言った。
「もしも破ったら、その時に教える。そのほうが、楽しいしね」
語尾に音符マークが付いてるかのようにウキウキした喋り方だった。
それから指に朱肉をつけ紙に判を押し、半ば強制的に誓わされた"約束を守ります"の文章。
そしてその下にあるのは"破った時にはそれ相応の罰を受けます"の文章。
一通り終わって、やっと彼は部屋を出て行った。
もちろん私の手錠は外して。
そして今日の出来事を振り返る。
お母さん。お父さん。
なんだか私は厄介毎に巻き込まれたみたい。
しばらく会えないけど、きっといつか脱出してみせるから。
それまで待っててね。
心の中で、両親に手紙を書いた。
作品名:NEVER-最初で最後の大犯罪- 作家名:*Mi