NEVER-最初で最後の大犯罪-
1話 さよなら
朝、暖かい日差しに包まれて、目を覚ました。
時計を見ると、7時ジャスト。
ちょっと嬉しく思いながら、私はベッドから起き上がる。
制服に着替え、いつもと同じように学校へ行く準備をし、リビングへ行くと、パンの良い香りがする。
「あっ、おはよう愛梨紗」
笑顔で出迎えてくれたのは、出勤前の母親だった。
「おはよーママ、パパ」
「ん、おはよう」
新聞を読みながらコーヒーをすする父はぶっきら棒に挨拶する。
いつもと変わりない朝の光景。
家族構成は私と両親の3人。
3人家族にしては贅沢な2階建ての1軒屋。
そこそこ普通に幸せな、平凡な家族だと私はこの17年間思い続けている。
ふとテレビを見ると、いつもと同じ朝のニュース番組がやっていた。
『……の夜6時半頃、……が遺体となって発見されました。この事件は……』
このニュースに対し、私は"ふーん"程度の感想しか持たなかった。
毎日毎日、残酷な殺人や自殺などの世の中の穢れを見ていると、だんだんとどんな事件も大した事に思えなくなってくる。
ちょっと怖いなって思った。
テレビから目を離すと、母親が玄関に出ていた。
「じゃあ、行って来ます」
「いってらっしゃい」
母親が出勤し、そしてすぐに父親も会社へ行く。
「行って来る」
「いってらっしゃい」
私はぽつんと1人寂しく残されて、朝ごはんをもくもくと食べる。
そして、最後に家を出るのが高校へ行く私の日常。
「いってきます、っと」
私はそう小声で呟きながら、家の鍵を閉めた。
「さてと、行くか」
こっちに引っ越してきてから、独り言が多くなったと思う。
高校に行くまで、たくさん人はいるし、近いけど、みんな知らんぷりだし、仲良くないし。
前に住んでいたところなら、どんなに遠くてもすれ違う人みんなが挨拶して仲良くて。
都会って、なんだか寂しいな。
「今日は良い天気!」
空を見上げて言ってみる。
返してくれる人はいない。
てくてくと歩道を歩いていると、視界を何かが遮った。
真っ暗だった。
目を見開くが、何も見えない。
――布で顔をすっぽりと覆い被されていた。
「?」
誰に?
――分からない。
途端に恐怖が私に襲い掛かってきた。
「い、嫌っ!!止めて!!」
必死に布を取ろうと手を掛けるが、腕ごと掴まれ抵抗できなくなる。
とても強い力だった。
作品名:NEVER-最初で最後の大犯罪- 作家名:*Mi