NEVER-最初で最後の大犯罪-
謝ったが、相手は無言。
そっちも謝れよ、と内心腹が立つ。
が、やっぱり表には出せない弱さ。
(なんか血生臭い……?はっ!まさかまさかの犯罪者?!)
なんて、ちょっと怖い想像していた。
すると、相手はようやく口を開いた。
「名前」
アルトな声がして、相手が男の人だと分かった。
「名前……?」
私が問うと、彼は再び口を開いた。
「キミの名前、何?」
ものすごく、優しい声で、何故だか私は安心した。
こんな夜道、しかも雨の中にいる男だから、なんか危ない人かと思って、勝手に防衛体制に入っていたようだ。
しかしそれは勝手な思い込みだったのかもしれない。
こんなに優しい声で、包み込んでくれるような甘い声で喋る人なんだもん。
きっといい人に違いない。
そんな考えを私は勝手にして、そして彼に易々と名前を教えてしまった。
「――愛紗……中軒愛梨紗(ナカノキアリサ)」
「アリ、サ」
それだけ呟くと、彼は満足したようにその場を去っていった。
その顔は暗くてよく見えなかったけど、少し微笑んでいるように感じたのは、気のせいだろうか。
「って、もうびしょびしょだし!走ったの意味ないし!」
ぼーっと少年が走り去った後を眺めていて、すっかり忘れていた。
今急いで帰っている途中なんだって事。
私は走って、すぐそこに見える普通の1軒屋に向かっていった。
作品名:NEVER-最初で最後の大犯罪- 作家名:*Mi