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不老不死ロリの国 第四部分

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「ふたりの幼女は、溺死か熱による死か、いずれにしても武器による物理攻撃ではなく死ぬレベルに達したわけで、大いに参考になったのではないかだよん。」
 昆太はふたりのすぐそばに行って、お腹の辺りに触れた。
「「ひゃあ。超絶セク腹!」」
「ち、違う。生きていることを確認しただけだ。本当にセクハラするな、別の部位を狙うはずだよ。」
ふたりともすでに復活していた。しかし、額は変化していた。
 新たに吝奈の額に『残り5』という刻印があった。
 箱子のは『残り4』と1減っていた。
 
 吝奈も死んで間に夢を見ていた。
『狼族は狩りが得意で昔からブルジョアの名門貴族でちゅわ。周りの部族が次々と不老不死となる中で、狼族だけが不老不死でないなんて、みっともないことはできなかったのでちゅわ。狼族は家の格を維持するため、不老不死を金で買っていたのでちゅ。それで家は続いていたのでちゅが、いつ頃からか、不老不死権利が高騰し、家は窮乏していったのでちゅ。見た目だけは貴族を維持していたが、衰退した原因が不老不死。表向き、それを肯定することはできなかった。不老不死が安く手に入れば家を再興できると考えているのでちゅわ。困ったことに、不老不死の販売元をワタクチは、未だに知りませんでちゅわ。それがわからない限り、狼族には没落の未来しかないのでちゅわ。』

「またあの夢でちゅわ。死ぬとよく見るのでちゅわ。すごく気分が落ち込みまちゅわ。だから死ぬのはイヤなのでちゅ。」

死へのバトルフィールドは、校舎内の別の階に変わっていた。
「次は、今までよりは安全ゲームな肝試しだよん。」
「肝試しって言ったら、精神攻撃の最たるものじゃないのか?」
「これだからシロートは。一度このセリフ、言ってみたかったんだよん。それをこともあろうにオニイチャンに言えるとは、もえ、幸せだよん。」
ホクホク顔の萌絵に対して、ひとりは明日にも世界が滅亡するような表情をしている。
「ブルブル、ブルー、ブルーマンデー。ブルーメランブルマデー。お、お化け屋敷なんて、こ、こわくなんかないぢゃん。これはタダのむしゃぶりつきぢゃん。」
そう言いながら、木憂華は昆太の背中で子泣きジジイになっている。
昆太には密着幼女に不満などあるはずもなく、逆に嬉々としていた。
市長が案内した場所は『分校ホラーハウス』という看板のある教室。ワンフロア全部がお化け屋敷なのだから、かなり広い。
「お化け屋敷!?分校にこんなものがあったんだ!楽しみ。ワクワク。」
「何を仰いまちゅの。これは遊びではありまちぇんわ。死を試す試練なんでちゅから。それに分校にこんな施設を作るなんてもったいないでちゅわ。お化け屋敷なんて、入場料もかかるし、面白くもなんともないでちゅわ、あんまり。最近人生をエンジョイしてまちぇんし、いやこれは全然楽しみでもなんでもないでちゅわ。ワクワク。」
こちらのふたりは遠足待ちの幼女であった。
「では入場するよん。入場料金は税金の無駄遣いだよん。」
「ということはタダでお化け屋敷に入れるんでちゅのね。タダより安いものは、おカネをもらってでもやれでちゅわ。バンザイでちゅわ!」
奇妙な格言を作りつつ、吝奈は無料と知ってさらにテンションが上がった。税金の使い道については、なんらツッコミはなかった。自分がよければすべてよしという、民主主義の根幹を揺るがす思考である。
「それでは突入するよん。」
お決まりの紫色暖簾をくぐると、眼前に広がる、荒涼とした寂れ墓場のブキミな図。
「コ、コワいよ~ん!」
昆太の腰に抱きついてきた萌絵。
「市長。実はこわがり幼女だったりして。」
ニヤリと邪悪猥雑系笑みを浮かべた昆太。
「だって、だって、コワいものはコワいんだもんだよん!ニタリ。」
ビミョーに意図的な行為であるように見えることはおいといて、こういう場合、女子は頼る男子のシャツを引っ張るものであるが、冷静に考えると、低身長の萌絵が握っているのはブーメランブルマ。感触に違和感を感じて、ソコを見ると、目の前に広がる伸びたブーメランブルマワールド。
「きゃああ!ドヘンタイだよん~!」
いきなり本気で卒倒した萌絵。自業自得とはこのことだった。
先導者がいなくなり、こわごわと進んでいく木憂華と、平然としつつも睥睨する箱子・吝奈。
「邪魔者がいなくなったところで、ゲートインだ。」
腰の抜けたっぽい木憂華を背中に乗せて、昆太一行は行動を開始した。暗い中で、少し先にぼんやりと何かが見える。古びた低い円筒形。
先頭を歩く昆太が口を開けた。
「あれは、お化け屋敷の定番、井戸か。」
ゆっくりと井戸から何か出てきた。細くて色とりどりな光が見える。
「な、なにかヘンなモノが生えてきたぢゃん!」
昆太の背中が大きく唸った。
出てきたのは手だった。カラーリングしている七色マニキュアがド派手。
「うらめしいってゆうか、暗い中にひきこもるなんていやだしぃ。だからお化粧やマニキュアやってるんだけどぉ、全然ダサいしぃ。」
ギャル風の短い花柄浴衣の女子。ウェーブのかかった茶髪をポニテにしている。前髪が垂れており、左目が隠れている。長いつけまつげとバーニングレッドのルージュが印象的である。ギャル風ではあるが、幼女であることに変わりはない。
「な、なんだコイツは?幼女だけど、かなり異質な存在だな。」
幼女と確認したものの、身構えている昆太。
「あたい、名前、ダサコだよ。この世界が不老不死でなかった頃に死んだんだよ。大昔に彼氏からお前のダサさに嫌気したと、殺されて人生ゲームオーバーしたんだよ。ホント、ダサい死に方だったしぃ。今は幽霊ライフ満喫中だしぃ。あ~あ、うらめしい、メンドクサいしぃ。」
「ゆ、幽霊!?初めて見た。不老不死の国なのに、死んで幽霊になるヤツがいるなんて、非科学的ぢゃん。それに大昔は男子がいたらしいし、あ~れ~ぢゃん。」
あまりの衝撃に、木憂華は気絶してしまった。
「あらら。何もしてないのに倒れちゃったぁ。気絶なんて、チョーダサいしぃ。仕方ないねぇ。これでも呪い殺すことを仕事にしてるんでぇ。あっ、別に殺しを呪い限定してないからぁ。次はどうするかなぁ。これ使うかなぁ。ちょっと古くてダサいしぃ。」
ダサコの視線の先には横長でない、かなり古い小型テレビが置いてある。アナログチャンネル付きで、骨董品級である。
「さあ、この中に入ってほしいしぃ。」
箱子は古いテレビに、セーラー●ーン的に目を輝かせて興味津々である。
「これって、タイムトンネルだとか、どこか違う世界に繋がってたりして。もしかしたら、お兄ちゃんの世界に行けたりするかも。」
「そのリアクション、ダサいしぃ。でもテレビの中はファンタジーワールドだしぃ。この言い方自体ダサいしぃ。でもドンドン入ってほしいしぃ。」
「わ~い。この中にディズニー●ンドがあるのかも。入っちゃお。」
「やめろ、箱子!キケンだぞ。それにテレビの中に入るなんてムリだろう。ブラウン管は遮蔽されてるぞ。」
昆太の制止をものともせず、箱子は両方の腕を振って、ワクワク顔でテレビの暗い画面の中で四つん這いになった。そのまますんなり潜り込んだ。この現象は物理的にはあり得ないが、某映画で実証実験済みである。