オヤジ達の白球 31~35話
俺も少し手伝おうと、寅吉がトンボを手にする。
T字型をした整地用具のことをトンボと呼ぶ。トンボに似ていることから
この名がついた。
あわてて団長が寅吉の手から、トンボを奪い取る。
「大先輩自らがグランド整備するなんて、とんでもないことです。
グランドは我々に任せてください。どうぞ先輩はベンチで
くつろいでください。
ベンチに、冷たいものが用意してあります」
「おいおい。俺は敵だぜ。そこまで特別扱いしてくれなくても結構だ」
「いえいえ。ゲームがはじまれば敵ですが、いまは我々の大先輩です。
東京消防庁のレスキュー隊長といえば、消防のエリート中のエリートです。
我々から見ればエベレストよりも、はるかに高い存在です。
他に何か有れば、遠慮なく、若い者へ何でも言い付けてください!」
ペコリと頭をさげた団長がトンボを片手に、グランドへ飛び出していく。
その様子を球場へ入って来た祐介が、呆気にとられた顔で見送る。
「じゃ。
ハンディとして2~3点、先に点をもらっておけばいいじゃないのさ。
どう頑張ったって勝てない相手だよ。
あんたが言い出せば2点や3点、かんたんにくれるんじゃないの?。
どう。我ながら名案でしょ」
作品名:オヤジ達の白球 31~35話 作家名:落合順平