オヤジ達の白球 31~35話
「え・・・離婚するのか、このあいだやって来た、あの美人の奥さんは?」
「うん。そういう話が静かに進行している。
離婚の原因はこの間見た、あの小太りの男との不倫かもしれないね」
「ホントかよ。となると、柊のほうは大丈夫かな・・・」
「男はたいてい大丈夫さ。
浮気がばれたって、俺は絶対にしてないと開き直ればいいんだから。
でもさ。女の場合はそうはいかない。
ほとんどの場合、そのまま離婚まで発展する」
「そんなもんなのか、不倫の末路は」
「男は、自分の浮気は棚へあげるくせに、そのくせ女の浮気は
絶対に許さない。
自分のモノにした瞬間から、独占欲のかたまりになるんだから。
女はモノじゃないというのに。
妻に浮気されて離婚しなかった男なんか、見たことがない。
許せないだろうねきっと。不潔な女は。
人の女房にまでちょっかいを出す男の方が、よっぽど不潔だというのにさ」
(たしかに・・・こいつの言うことには一理ある)苦い顔で祐介が納得する。
「で、いつなんなのさ。その、消防との練習試合は?」
「なんだ。中身を聞いていないのか。今度の土曜だ。
時間は6時から。
場所は土木組合がつくった、ナイター設備の有る専用グランドだ」
「じゃ体調を万全にして、酔っ払いどもの応援に行くとするか、あたしも」
「来るのか、お前。
ソフトボールなんかに興味が有ったのか?」
「あら。忘れたかい、あたしが文武両道の女だってことを。
高校の時、県大会で準優勝した投手がいたことを忘れたかい?。
駄目か。覚えていないか。
あの頃あんたは、別の女に猛烈に熱をあげていたからね。
あたしの初恋の相手はとにかく、惚れっぽくて、
冷めやすい男だったからねぇ。
忘れられちまったか、困ったもんだ。うっふっふ」
(33)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 31~35話 作家名:落合順平