オヤジ達の白球 31~35話
「実は今度の試合なんだが、どうにも投手が坂上ひとりじゃ不安すぎる。
そこでお前さんに、白羽の矢をたてた」
「なんだぁ?ひょっとすると俺に、坂上のリリーフを
してくれと言う頼みか?」
「そう言うことだ。助かる、とにかくお前さんは話が早くて」
岡崎がニコリと笑う。
熊の目の前にずいと、右手の5本指を突き出す。
「追加しょう。大盤振る舞いだ。山崎のフルボトル、5本で契約してくれ。
ただしおまえさんは、あの乱闘事件の一件以来、無期限の永久追放に
されている身だ。
そこでだ。ミスターⅩとして登録しておく。
したがって投げるときには、サングラスとマスクで顔を隠してくれ」
「ミスターⅩ・・・
ああ、”わたし、失敗しないので”という、例のあれか!」
「失敗しないのは女医だ。あっちはドクターⅩ。
おまえさんはミスターⅩだ。。
サングラスとマスクで顔と正体を隠した謎の投手、ミスターⅩということさ」
「なるほど、正体を隠して登板するのか。
だがよ。ホントにいいのかよ、俺が投げても。
事実をしったら町の体協の連中が、目を丸くして驚くぜ」
「いま大将が対策を考えてくれている。
だがいまのところは、素顔のままじゃまずい。
しばらくは顔を隠せ。ミスターⅩとして、うちのチームで投げてくれ」
「山崎をあと2本、追加しろ。。今年の夏は例年になく暑くなるそうだ。
くそ暑い中。マスクとサングラスで顔を隠していたんじゃ、それだけで
熱中症になりそうだ」
「そうだな。とにかく熱くなりそうだ。今年の夏は。
だがよ。ひさしぶりに楽しい夏がやってきそうだ。
なんだかよ。試合するのがいまから、がぜん、楽しみになって来たぜ」
(32)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 31~35話 作家名:落合順平