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オヤジ達の白球 31~35話

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 「部長と副部長と事務局長の3人、おまけに紅一点の千佳さんですか。
 ずいぶんと豪勢なメンバーです。
 町の大会だって、これほどまでの審判団は集まりません」

 「そういうな。だから千佳の警護でやって来たと言っておるじゃろう。
 どれ。グランド整備も終わるようじゃ。
 ぼちぼち、試合前のお互いの練習といこうかのう」

 そうですね。そろそろ整備も終わりですからと、団長がトンボの手をとめる。
そのとき寅吉が、見るからに不機嫌そうな顔で近づいてきた。
あれ。何かあたらしい問題でも発生したかな・・・団長の顔が曇る。

 「おい。2軍を相手に練習試合をするのか、俺たちは。
 なんとも馬鹿にされたもんだ。
 俺たちみたいな素人を相手に、本気の試合なんかできないってか!」

 「あ・・・いや、けっしてそういうつもりでは無いのですが・・・
 大先輩たちにまんいち、怪我なんかされたら、俺たちの立場がないもんで」

 「ふん。いらぬ心配だ。いいからレギュラーを全員出せ。
 いいな。全力で俺たちに向かって来いよ。
 年寄りが相手だと思って手なんか抜いたら、おれが承知しないからな」

 「しかしそれでは・・・」力が違いすぎますと言いかけて、
団長が言葉を呑んだ。
「分かりました。先発は全員、レギュラー選手でいきます。
全員に絶対に力を抜くなと言い聞かせます。
トラはウサギを捕まえるのにも全力を出すそうですから」
と胸を張る。

 「よし。それでこそ俺の後輩だ。審判部長。聞いての通りです。
 青臭いガキを相手に怪我なんかしているようじゃ、俺たちのチームに
 未来は無い。
 手加減せずに向かってくるそうですから公平なジャッジを、
 よろしくお願いします」

 寅吉が、審判部長に向かって丁寧にあたまをさげる。


 (35)へつづく