【短編集】人魚の島
あと、僕はあそこまでスケベじゃありません。あなたが山のなかの温泉につかっているときにのぞき見したことは認めますが、あれは不可抗力の事故です。あなたの裸を見たい、なんて邪念を持っていたわけじゃ……いえ、この話はもうやめておきましょう。たいへん目の保養になりました、とだけお伝えしておきます。
こんな僕でよければ──僕もあなたに会いたいです。会って、あのときのことをいろいろと語り合いたい。ターナとセレンにも会えますか? ターナとはもう一度、剣の試合をしたいですね。たぶん、三秒ともたないで負けると思いますけれど……。
僕が体験したことをラノベにして書いたぐらいですから、あなたがフィリシア王女であるという確信はありますが、それでもひとつ、確認させてください。あの温泉事件のとき、あなたも僕の裸を見ているはずです。オリオン座みたいに三つ並んだ僕のホクロはどこにありましたか? あなただったら答えられるはずですよね?
別紙に僕の携帯電話のメールアドレスを書いておきました。そのメールアドレスに答えを送ってください。
正解だったら──あなたに会いに行きます。いや、たとえ不正解でも、会いに行きますから。
知っていましたか? あなたが住んでいる町と僕が住んでいる町は、県境をはさんで隣り合っているんですよ?
草々