巡り合う街の不確定未来 探偵奇談16
「大切だったヒトと約束してた。ここで再会して二人でまた、あの曲聴きに行こうねって、十年前の今日に約束してたんだ」
でも来ない、来るわけない。中年は寂しそうに笑う。
「夏に結婚したって聞いた。だから来るはずないのに、チケット二枚とって、こうしてここで」
待っていたのか…。来ない、大切だった誰かのことを。
「俺も分も、聴いてきてくれ。そのかわいい子と」
これこそ真のエンディング?
瑞はしばし呆けていたが、はよいかんと終わるぞ、と声を掛けられ我に返った。
「ありがとございます。いこう、一之瀬!」
「え?え?どこに!?」
「走れば間に合うかも!」
「え?待って!」
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作品名:巡り合う街の不確定未来 探偵奇談16 作家名:ひなた眞白