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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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機械人形アリス零式

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 ゼクス背負っている赤いランドセルが自動的に開き、中からワイヤーが伸びて出入り口に飛んだ。ワイヤーの先についていた吸盤がドアに張り付き、ワイヤーをモーターで巻き上げながらゼクスは出入り口に移動した。
「カードキーは、どこやったか……?」
 白衣のポケットに手を突っ込んで、ゼクスはカードキーを取り出すと、屋上のドアを開いてウェストビルに侵入した。
 細い廊下の途中にはいくつかのドアがある。この場所は関係者以外立ち入り禁止の管理室に続く廊下だった。
 廊下の途中にあったドアが開き、勢いよく男が飛び出してきた。そしたら、いきなりの乱射だ。
 機関銃を乱射され、逃げ場のない細い廊下でゼクスは一環の終わりかと思いきや、背中に背負っていたランドセルが自動的に開き、中から2本のアームらしき物が飛び出した。
 アームが持っていた銃器からカノン砲が発射された。狭い廊下でだ。凡人ならやらない行動だ。
 カノン砲は狙いがどうこうということを無視して、大爆発を起こした。
 爆風にうろたえることなく、特殊ゴーグルとマスクを装着したゼクスは管理室に乗り込んだ。
 管理室には数人の男が待機していたが、ゼクスのランドセルから催涙性の煙幕が噴出され、男たちは瞬く間に眠りに落とされた。
 煙の立ち込める中で、ゼクスはタッチパネルを操作し、システムにアクセスを開始した。
 通常のアクセスコード入力画面で、ゼクスはマニュアルに書いていないアクセスコードを入力した。
「上上下下左右左右BA。防御システム全解除や!」
 ゼクスの入力したアクセスはショートカットキーだった。ウェストビルを覆っていた防護壁が一気に消え去り、防火シャッターも全て開くはずだった。
「んなあふぉな」
 画面に表示される『Error』の文字。
「ウチが開発したシステムやで」
 低く洩らしたゼクスはしゃがみ込み、ランドセルから出てきたドライバーがボルトを外して、金属板を取り外してコンピューターの内部を露出させた。
「サイバー寄生虫やないか」
 コンピューターの内部には、金属の身体を持つ小さな蜘蛛たちが巣食っていた。
 サイバー寄生虫とは、人工的に造られた対コンピューター用の寄生虫で、あらかじめプログラムされた行動に従い、コンピューターのデータ改ざんや破壊活動などを行うのだ。
 ランドセルの中からサイバー寄生虫用の殺虫スプレーを出し、サイバー寄生虫を一掃したがデータが元に戻るとは限らない。おそらく戻らないだろう。
「くっそ〜、しゃーない」
 ゼクスは背負っていたランドセルを降ろした。ランドセルはオートで動き出し、プラグやらドライバーなどを伸ばし、コンピューター内部の修復をはじめる。それを確認して、ゼクスは部屋の外に出た。
 秘密兵器を失ったゼクスは心もとない。と思いきや、ゼクスは余裕の笑みを浮かべながら、大股で廊下を闊歩する。小柄なので、大幅で歩いても大の大人が歩くのとさほど変わりないスピードだが。
 ショッピングフロアに出たゼクスは辺りを見回して、露骨に顔をゆがめた。
「なんちゅー無残な」
 割れる硝子壁や銃弾を浴びて惨殺された人の山。ウェストビル100階でまるで戦争が起きてしまったようだ。
 閃光が奔った。特殊ゴーグルを装着したままのゼクスは、その閃光の中でズームイン機能&熱感知システムでで人影を確認していた。
 白衣のポケットに手を突っ込みながらゼクスが走る。向かうは帝都銀行ミナト区ツインタワービル支店。

 〈メイル〉を装着したアリスは〈ソード〉を片手に敵と交戦していた。この中に強敵はいないとアリスは判断していた。強敵とはつまり、防火シャッター付近に屍体の山を気づき上げた敵だ。その敵がここにいないとなると、まだ予断はできず、強敵に備えてエネルギーの温存をしなければならない。
 アリスの〈メイル〉は敵の銃弾を弾き返し、〈ソード〉が敵を一刀両断する。
 この場に白衣の人物が乗り込んできた。
「どっちが敵や!?」
 声をあげたのはゼクス。彼女はアリスとスーツの男たちを見比べて、どっちが敵かを判断した。
「柄悪そうなあんちゃんたちが敵やな!」
 人を見た目で判断したゼクスは白衣のポケットから手榴弾を取り出して投げた。
 爆音と煙に巻かれて、敵たちは慌てふためき、アリスはここぞチャンスと敵を一掃した。
 煙の立ち込める中で、ゼクスはアリスに近づいた。
「あんた誰や?」
「主人[マスター]マナにお遣いする機械人形のアリスと申します」
「あの社長さんのとこの娘[コ]かいな。どないしてこないなとこにおるねん?」
「人を探しております」
「人を?」
 銃声が再び鳴り響いた。
「うっさいんじゃボケ!」
 怒鳴ったゼクスは白衣のポケットから黒光りする球体を取り出した。
「お止めください!」
 それがなにであるか悟ったアリスが止めるが、ゼクスの手のほうが早かった。
 ゼクスの手から天井に放り投げられた野球のボールほどの球体は、空中で回転を始めて徐々に大きな竜巻を作り出した。
 ――時空魔球。辺りにある物を手当たり次第に吸い込んで異空間に閉じ込める危険な武器だ。
 宙を浮かぶ時空魔球に近場の物が吸い上げられる。床に横たわってた屍体が持ち上げれて、屍体より遥かに小さい玉に呑まれる。銀行の待合室にある椅子が持ち上げられる。
 時空魔球を使用したときの鉄則は、使用したら一目散に逃げることだ。
「アリス逃げるで!」
「はい」
 ゼクスを追いかけてアリスもこの場から逃げ去った。敵たちも散り散りに逃げていく。次にこの部屋に来たときには、そこら中の物が綺麗さっぱり片付いているに違いない。そして、容量を超えた時空魔球は、自動的に物を吸い込むことをやめて、宙から落ちて地面に転がるのだ。