オヤジ達の白球 26話~30話
堤防に立っていた岡崎が、こっちへ来てくれと熊を手で招く。
「悪いな。
実はな、おまえさんを見込んで是非とも、見てもらいたいものが有る」
「見ろと言われても、見えるものといえば、ガキどもが
サッカーしてるだけだ・・・
他にはなにも見当たらねぇぞ。
こんな辺鄙な場所へ俺を呼び出して、いったい何を見せるというんだ?」
熊がサングラスを下へずらす。
レンズの下から、不機嫌そうな熊の両目が出てきた。
「ガキのサッカーなんかにゃ、まったく興味はねぇぞ。
あとは何もねぇただの河川敷だ。
何が有るっていうんだ。こんな場所によう・・・」
「そう言うな。まもなく時間だ。
そのうちに、面白いものが観られるから」
「そのうちに?。
なんだ。人を呼び出しておきながら、主役は俺の後から登場するのか?」
「毎日、午後の5時半になると、ある男がここへやって来る。
あらわれるのは、ここから見下ろすことができるテニスの壁打ちの前だ」
「壁打ち?。
ああ、駐車場の隅にある、薄汚れたあのコンクリートの壁のことか。
たしかテニスコートは、新しく作られた運動公園へ移動したはずだ。
あんな薄汚れた廃墟、いまじゃ誰も使わねぇだろう。
そんな場所へ毎日、5時半になるとやって来るやつがいるってか?。
呆れたねぇ。なんとも物好きな人物がいるもんだな」
「そう言わずもう少し待ってくれ。面白いものが見られるから」
作品名:オヤジ達の白球 26話~30話 作家名:落合順平