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オヤジ達の白球 26話~30話

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 1杯やるかと岡崎がポケットから、ミニサイズのウィスキー瓶を取り出す。
取り出したのは、シングルモルト 山崎 12年もののミニチュアボトル。
50ミリリットル入り。

 「おっ。気がきくねぇ。洒落たものを持っているじゃねぇか。
 道理で自転車でやって来いと、何度もしつこく念を押したはずだ。
 ごちそうになるぜ。
 山崎の12年ものか。いいねぇ、貧乏人には垂涎モノのウィスキーだぜ」

 どれ、と熊が土手にどかりと腰をおろす。
織物の町・桐生市は、関東平野の最北端に位置している。
北にそびえる赤城山は谷川連峰を経由して、やがて越後の山並みへつながる。
遠くに見える榛名山と妙義山は、そのまま信州の山並みへとつながっていく。

 西に活火山が見える。いまも噴煙をあげている浅間山だ。
ここから見える山容は、まるで富士山とうり二つ。冬には真っ白に雪化粧する。
他県から来た人はこの山を見て、思わず「富士山が見える!」と驚嘆する。

 ほんものの富士山が見えないわけでは無い。
前日に強風が吹き荒れ、空気が澄んだ翌日にかぎり、南へつらなる山脈のはずれに、
小さく富士山を見ることができる。
運が良ければ熊が腰を下ろした土手からも、遠くに富士山を臨むことができる。

 「お・・・5時半になったぜ。
 ほれ。噂の人物が時間通り、テニスの壁の前に現れたぜ」

 岡崎が、熊に声をかける。

 
(28)へつづく