オヤジ達の白球 26話~30話
「正気か?。本気でそんなことを言ってんのか、おめぇは?」
「本気と言ったら、あんたはいったいどうするの?」
「いそいで市役所へ行く。婚姻届けの用紙をもらってくる。
ついでに、散婚届けもいっしょにもらってくる」
「それはいい考えだ。結婚しなきゃ離婚することもできない。
でもさ。わたしと長くつづかないって、どうしてあんたはそう思うのさ?」
「俺の性格と、お前の気性だ。
どこからをどう考えても、絶対に長くつづくはずがねぇ」
「わかっているじゃないの。
それでもさ。
本当はわたしと一度くらい、結婚してもいいと考えているんだろ?」
「考えていないと言えば嘘になる。
だがその気が有ると言えば、それもウソになる。
一緒に暮らしてみなければわかんねぇだろう。男と女の相性なんか。
でもよ。それを考えると、女を口説くのが重くなる」
「あたし、床は上手だよ。それにさ、見かけによらずしつこいよ」
「おいおい。なんとも不謹慎すぎる発言だな。
誰も居ないからいいようなものを、よく恥ずかしくもなく、そういうことを
男に向かって平然と言えるよな・・・信じられないぜ、まったく」
「あら・・・調子に乗り過ぎて、ついホントのことを言っちゃった・・・」
(これだもんな。おれたちは絶対に、一緒になんかなれないはずだ)
ビールを飲んでいた祐介が、苦笑を洩らす。
「だってしょうがないでしょ。ぜんぶ、ホントのことだもの」
ヒョイと伸びてきた陽子の指が、祐介の手からビールの瓶を奪い取る。
(27)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 26話~30話 作家名:落合順平