オヤジ達の白球 26話~30話
ボールを拾い終えた坂上が、ダッシュでまた投球の位置まで戻って来る。
息が落ち着くのも待たず、また腕をぐるりと回す。
そのまま壁に向かってボールを投げる。
こんどもまたボールはまっすぐ飛ばない。壁の右側へ向かって
凄い勢いで飛んでいく。
大きな音をたてて跳ね返ったボールが、強い勢いのまま、ふたたび坂上の
頭を越えはるか後方へ転がっていく。
「いいかげんな投げ方をしているわりに、球威と球速は有りそうだ」
「あいつの夢は、火の出るような剛速球を投げることだ。
元気のいい球を投げて、バッターを全員、きりきり舞いさせることを
目指しているそうだ」
「速い球を投げて三振をとるつもりなのか、あいつは・・・
ふん。だから素人は困る。
早い球を投げる前に、制球力を磨いてストライクを投げないと、
誰もバットを振ってくれないぜ」
「球威より、制球力をつけることが大事なのか、
投手の練習というものは・・・」
「当たり前だ。100キロの速球を投げてもボールじゃ誰も手をださねぇ。
それどころか、大汗をかいていくら投げても、四球とデッドボールの
山をきずくのがせいぜいだ」
「それじゃ困る。それじゃ、今度の試合に間に合わねぇ!」
「なに・・・もう坂上に投げさせるつもりでいるのか。おまえらは!。
ボールがどこへ飛んでいくかもわからねぇ、あんなど素人のピッチャーに!」
(30)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 26話~30話 作家名:落合順平