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オヤジ達の白球 26話~30話

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 「そうだ。握り方は、人差し指と中指をV字に開く。
 指先の腹をボールの縫い目にしっかりかける。
 親指は反対側をはさむように握る。それが基本的なソフトボールの握り方だ。
 それから投球前に、あんな風に棒立ちというのも、すこぶるまずい」

 「棒立ちじゃまずいのか?」

 「投げる前はまず、軸足のひざを軽く曲げておく。
 膝をやわらかく曲げておくことで、次への動きがスムーズになる。
 棒立ちというのは足腰を使わず、ただ、上半身と腕っぷしで
 投げることになる。
 誰が投げても、かならずの最悪の結果を産む」

 「最悪の構えなのか?、棒立ちは。本当に最悪なのか?」

 「見ていりゃすぐにわかる。結果が出るから。
 見てろよ。あの構えじゃ、まっすぐの球なんか絶対に投げられないから」

 熊がグビリと2本目の山崎を呑み込む。
堤防の上でそんな会話が交わされているとも知らず、坂上が投球動作にはいる。
ぐるりと腕を回したあと、力任せの白いボールがコンクリートの壁に
向かって飛んでいく。

 「ほら見ろ。いわんこっちゃねぇ。予想した通りの大暴投だ」

 坂上の手元を離れたボールが、コンクリート壁のはるか上部へ向って
飛んでいく。
4mほどある壁の頂点で、大きな音をたてて跳ね返る。
跳ね返ったボールが坂上の頭上を超えていく。そのままはるか後方へ
ドンと落ちる。

 「言わんこっちゃねぇ。
 あの態勢からじゃ、いくら投げてもあんな大暴投ばかりだ。
 しかし。あの大暴投は、予想外のメリットを生むかもしれねぇなぁ。
 投げるたびに、うってつけのトレーニングになるぞ」

 「うってつけのトレーニングになる?。
 いったいどういう意味だ、北海の熊?」

 「考えてもみろ。
 あんな投げ方していたんじゃ、いつまで経ってもボールに
 コントロールはつかねぇ。
 投げるたびに大暴投する。
 だがその大暴投が、実は、けっこう役にたつ。
 見ただろう。勢いがあるぶん、ボールははるか後方まで転がっていく。
 となるといやでも、ボールを拾うため走っていくことになる。
 つまり。暴投するたび、いやでも結果的に、足腰の鍛錬ができることになる」