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オヤジ達の白球 21~25話

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 「詳しいな。そういえばお前、昔は文学少女だったよなぁ。
 作家になると思っていたら、いつの間にかのまったく別世界の愛人暮らしだ。
 わかんねぇもんだな。人生なんて、どんな風になるのか」

 「2言目には愛人、愛人て。私の前で大きな声で、はっきり言わないで頂戴。
 ひっぱたくよ、本気で。
 江戸時代の姦通罪は、被害者が訴え出ない限り表沙汰にならないの。
 また訴え出ても、動かない証拠を掴まないかぎり、奉行所が2人の姦通の
 事実を見極めるのは、とても難しい。
 感情のもつれでいちいち奉行所に訴えられたら、きりがないもの。
 だから奉行所は、当事者同士や、双方の家主や地主などの土地の顔役が
 話し合う『内済』を命じるの」

 「内済?。示談交渉みたいなものか?」

 「そう。第三者を入れて冷静に話し合うの。
 『内済』の結果、金を支払って解決することが多かった。
 この金のことを「首代」と言うの。江戸の相場は、七両二分。
 経済状態に応じて値段が変動するけど、これが金で片づける相場だった」
 

 「示談のための金額が七両二分?。今の値段に換算するといくらだ?」

 「一概に言えないねぇ。時代によって差が有るもの。
 「文政年間漫録」という文献に、大工さんの収入と生活費が事細かに
 記録されている。
 日当は銀5匁4分。今のお金にして、1万2000円。
 年間の労働日数が294日で、年収は、銀1貫587匁6分。今風に言えば343万円
 四畳半2間の住まいは、家賃が年間で銀120匁。26万円で、
 1月当たり2万1000円。
 家族3人(夫婦と子ども1人)のお米代も同じぐらいだ。年間で銀120匁。
 調味料代や光熱費にあたる「調味・薪炭代」の割合が結構高い。
 年間でおよそ700匁(151万円)もかかった。
 年収の半分近くをこうした雑費が占めている。
 だから、庶民はが贅沢品や娯楽などに使えたお金は、決して多くは
 なかったと思う」


(24)へつづく

作品名:オヤジ達の白球 21~25話 作家名:落合順平