オヤジ達の白球 21~25話
(柊は、俺が知っている限り、昔から真面目で固い男で通っていた。
そんな男がいつのまにか、どこかの見知らぬ主婦と『不義密通』の関係か。
ううん・・・まったくもって一寸先が分からないものだな。人生は・・・・)
祐介が2人から目を離す。
カウンターに背を向ける。ぼつぼつと厨房の片付けを始める。
2人はぼそぼそと、会話をつづけている。
洗い物が一段落した頃。
柊が『また来るぜ』と女を促して立ち上がる。
5千円札を1枚カウンターへ置いて、女の腰へ手を回す。
「釣りはいい。口止め料だ。
少ないが、チップと思って取っておいてくれ。
ソフトボールのチームがまとまることを祈っている。
この体型だ。健康のために、俺も運動をやりたいと思っているが、
仕事に追われて、帰ってくるのがいつもこんな時間になる。
たまにはお前の顔を見に来ないと、道で行きあっても無視されるからなぁ。
悪かったな。閉店間際に、すっかり邪魔しちまって・・・」
立ち上がった柊が、馴れた様子で女の身体を引き寄せる。
女もまったく嫌がる様子を見せない。
それどころか。いつものようにとばかり、男の肩へ細い体を傾ける。
(22)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 21~25話 作家名:落合順平