オヤジ達の白球 21~25話
女がスカートをひるがえし、柊の隣りへチョコンと座る。
まったく初めて見る顔だ。
(何者だ、この女は?。何処にでもいそうな主婦という感じがする。
しかし。この時間に呼び出されて、出かけてくることができるということは、
柊とただの関係じゃないんだろうな。おそらく・・・)
祐介が女の前へ生ビールのグラスを置く。
グラスを置くまでのほんの短い時間。
さらに細心の観察眼で、なめるように女を観察していく。
(濃い化粧をしているわけじゃねぇ。だがスッピンでもねぇな。薄化粧だ。
ということは素顔を許せる相手という意味になる。
それとも、化粧する暇がないほど慌てて、ここへ駆けつけてきた
ということか?
柊の不倫の相手かな?。
それにしちゃ清楚な感じが漂っているから、どこか違和感が有る・・・・)
柊の妻も同じ公務員。隣町の高校で音楽を教えている。
休日の日、2人で仲良く散歩している姿を、たびたび祐介も目にしている。
「娘が3人。ばあちゃんもいまだに元気だ。
女ばっかり5人もいるんだぜ、我が家には。
女があふれていて羨ましいと他人はいうが、家中にあふれる化粧の匂いには
閉口だ。
一人暮らしも寂しいだろうが、女ばかりあふれている家の中も
逃げ場所がねぇ。
苦労するなぁ、お互いに、この歳になってからよ」
いつだったか朝の散歩で出くわしたとき。柊はそんな風に愚痴を言っていた。
「アマゾネスの巣だぜ。俺んちは」と手を振り、女房のあとを追っていったことがある。
作品名:オヤジ達の白球 21~25話 作家名:落合順平