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オヤジ達の白球 21~25話

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オヤジ達の白球(21)薄化粧の女

 それから10分が経過した。人がやって来た気配がする。
柊の約束の人だろう。
遠慮気味に、カラカラとガラス戸が開く。
30代半ばと思われる女性が、不安そうな顔で店の中を覗き込む。
 
 「よう。来たな。こっちだ。
 悪かったな。こんな汚い居酒屋なんかへ呼び出して。
 心配するな。遠慮することはねぇ。無理を言って閉店間際に入れてもらった。
 誰もいないから安心して入ってこい」

 女の顔を見た瞬間。総合土木職が声をかける。
ガラス戸に手をおいたまま、不安そうに視線を走らせていた女の顔に、
ようやく安堵の色が浮かぶ。

 「悪かったなぁ。急に俺のほうから呼びだしたりして。
 めずらしく早めに仕事が終わったんだ。こんな時にしか行きあえないからな。
 そうだ。店主を紹介しておこう。
 こいつは俺の昔からの友達で、祐介という。
 無愛想な顔をしているが、口は固い。信用できる男だ。
 祐介。もうすこし飲んだら河岸を変える。
 とりあえずこいつに、生ビールを一杯出してやってくれ」

作品名:オヤジ達の白球 21~25話 作家名:落合順平