オヤジ達の白球 21~25話
「なるほどねぇ。
姦淫は罪が重いがそれを公にせず、金でケリをつけるか。
そんな便利な方法が江戸時代に有ったんだ。
だがよ。悪事を働いても金でキリがつくとわかれば、不倫する奴は
後を絶たねぇ。
道理でいつの時代でも、男と女の火遊びは、際限なく発生するわけだ」
「それがそうでも無いのよ。ぜんぶがそんなに上手くいかないの。
とくに、江戸時代においてはね」
陽子が、黒い瞳を光らせる。
「そうでもない?。どう言う意味だ。
男女の不倫は、金でかたがつくはずじゃなかったのか?・・・」
ビールグラスを手にしていた祐介が、ぴたりと固まる。
固唾を飲み、陽子の言葉を待つ。
「夫の側に特別な権利が有るの。
姦淫の現場を発見すれば間男と妻を殺害しても、罪には問われないの」
「何だって。斬り捨てても構わないのか、江戸時代は!」
「剣客商売シリーズ十三巻の『波紋』の章に、その場面が登場する。
桶屋の七助が、自分の女房と二階で姦通をしていた剣客の関山百太郎を
殺害してしまう事件が起こる。
でもね。桶屋の七助は、法的になんの問題もないと結論されるのよ」
「2人を殺しても無罪か。なんだか急には信じられねぇ話だな・・・」
作品名:オヤジ達の白球 21~25話 作家名:落合順平