小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

オヤジ達の白球 16~20話

INDEX|8ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 


 「こいつは一本ずつ、桐の箱に入って納品されます。
 特級品だけに許された特別の待遇です。
 実は正月の時期にだけ出回る、特別仕様の極上品です。
 最上級の審判員を目指しているあなたに、ぴったりです。
 何の目標も持たない、飲むだけが取り柄のウチののんべぃ達に、
 あなたは希望と元気をくれました。
 感謝をこめて、俺から、あなたへ贈るお礼の地酒です」

 「え?。皆さん、目標を持っていらっしゃらないのですか?」

 女の瞳が、祐介の顔を覗き込む。

 「あるわけがないでしょう。あんな飲むしか脳の無い連中に・・・・」

 2人が声をひそめる。その瞬間、2人の顔が近くなる。
距離があまりにも近過ぎていることに、祐介がすぐに気が付く。
あわてて2歩3歩、厨房の中を後ずさりする。

 「目標どころか、何もやることをもっていない連中ですねぇ、
 あいつらときたら。
 日が暮れれば、酒ばかり呑むことを考えています。
 趣味もなければ、家族と過ごす時間も作ろうとしない。
 いや・・・のんべぇ過ぎるがゆえに、家族から無視されているというのが、
 たぶん正解でしょう。
 ここにいるのは夢を見る前に、ベロンベロンに酔いつぶれてしまう連中です」

 「うふふ。
 そうした状況をつくりだしている一番の張本人は、大将、
 あなただと思いますけど?」

 「おっ、あっいけねぇ。まさにその通りだ。
 まいったなぁ。この件は、あなたと私のあいだだけの内緒話にしてください。
 痩せても枯れても、居酒屋の大将だ。
 これ以上の不用意のコメントは、身を滅ぼしちまう。
 危ねぇ危ねぇ。これ以上は何もいえねぇ・・・」