オヤジ達の白球 16~20話
岡崎がガタガタとテーブルを引き寄せる。
店の奥で急きょ、ソフトボールチームのメンバー編成がはじまった。
「あら・・・どういうことかしら?。
なんだか・・・大変な騒ぎがはじまりまったようですねぇ」
女がカウンターでクスリと笑う。
「みんな、あなたが原因で始まったことです」
特上吟醸酒の入ったコップを女の前に置きながら、祐介が笑う。
「そういえば。
あなたとこんな風に会話するのは初めてですねぇ」
「はい。うふふ。
いつものんべぇのみなさんに邪魔されています。
たぶん、今夜が初めてです」
女がうれしそうに笑顔をうかべる。
「ソフトボールの国際審判員を目指していると、噂で聞きました。
国際審判員というのは、難関ですか?」
「国際審判員の試験は、数年に一度しか実施されません。
第1種の資格を取った審判員のおおくが、最後の夢としてあこがれている
超難関です。
なにしろルールや技能ばかりでなく、英語の会話力も必要とされていますから」
「なるほど。確かに難しそうな資格だ。
そこまであなたが国際審判員にこだわっているのには、なにか
特別な理由があるのですか?」
いつものように頬杖をつき、日本酒のグラスを傾けている美女と、
厨房に立つ祐介の距離が、いつも以上に接近してきた。
だが誰もそんなことなど気にしていない。
奥のテーブルへ集まった男たちは誰ひとりとして、祐介と美女が2人きりに
なっているカウンターの様子など、まったく気にしていない。
(18)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 16~20話 作家名:落合順平