オヤジ達の白球 16~20話
「熊の話じゃ、ものになるまで最低でも3年はかかるそうだ。
だがよ。そんな呑気なことは言ってられねぇ。
のんびり構えていたら、また坂上の気持ちがかわっちまう。
どうだろう。
こんどの秋の大会に、居酒屋のチームとして参加するというのは」
秋の大会といえば半年後だ。
(短すぎる。いくらなんでも性急すぎるだろう)
祐介が異を唱えようとしたとき、岡崎が自信たっぷり、祐介を
正面から見据える。
「そのくらいでちょうどいいんだ。
あいつの性格は長年つきあってきた俺が、一番よくわかっている。
ブタもおだてりゃ木に登る。
そういう男だぜ。坂上という超単細胞は」
「おだてりゃ木に登るのか、坂上は?」
「馬鹿はとににかくおだてるに限る。長い目で見るのは駄目だ。
短期決戦で、早めに結果を出すようにさせる。こいつが一番効果的だ。
秋の大会にエントリーしたから、早くウインドミルをマスターしろと
持ち上げる」
「うまく行くかな?。こちらの思惑通りに・・・」
「うまくいかない場合もある。
そのときのために、隠し玉として、北海の熊に投げさせればいい。
あいつは実績がある。坂上が間に合わなくても、充分に穴埋めは出来る」
「熊は駄目だ。あいつは永久追放のチームの一員だ。
そんなやつを投手として登録したら、町の体協が絶対にウンと
言わないだろう」
「ミスターⅩとして登録しておくのさ。
本番になったら、サングラスとマスクで変装させればいい」
「おいおい。いいのかよ、そんないい加減なことで・・・」
「構うもんか。なんとかなるだろう。
しょせんは飲み屋に集まるのんべぇのチームだ。
多少のことなら、許されるだろう」
(17)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 16~20話 作家名:落合順平