オヤジ達の白球 16~20話
地方上級公務員の試験は、3段階ある公務員試験のうち最上級にあたる超難関。
これに合格すると畏敬を込めて「キャリア」と呼ばれる。
別の言い方をすれば、エスカレ―タ式に将来、県庁のトップまで
上り詰めていく人間、あるいは人種ということになる。
「お前。また物好きをはじめたんだって?。
酔っぱらいどもを集めて、ど素人どものソフトボールチームを作るため、
奔走しているという話を聞いたぜ?。」
「監督をやってくれと頼まれた。
なんだ。お前もソフトボールをやる気になったのか。やるのならいつでも
大歓迎だ。
肥満体型の改善のためにも、運動は必要だろう」
「笑わせるな。一般の俗人どもと、俺さまを一緒にしないでくれ。
官僚を夢見て、出世街道を突っ走った身だぜ。
可笑しくていまさら、庶民どもと、ソフトボールなんか出来るもんか」
「よく言うぜ。その恰好は、官僚を夢見た男のなれの果ての姿だろう。
それとも今のキャリアは、そんな風に、Yシャツとネクタイの上に
土木の作業着を着るのか?」
「競争に負けると、本庁からの都落ちが待っている。
いまじゃ出先機関で所長をしている。
総合土木職という現場だ。
ここがまた、年中休みなしという忙しすぎる場所だ。
公務員といえばみんな暇を持て余し、遊んでいるように見られている。
だがどっこい、現場はすこぶる忙しい。
予定は毎日すし詰めだ。決められたスケジュールをこなすだけでクタクタだ。
今日は運がいい。22時前に帰ってくることができたからな。
いつもから見れば、ずいぶん早い帰宅だぜ」
作品名:オヤジ達の白球 16~20話 作家名:落合順平