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オヤジ達の白球 16~20話

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 「そんなに忙しいのか、外部で仕事する総合木土職ってのは。
 公務員は、急がず、慌てず、仕事せずの3拍子が揃っているとばかり
 思っていた。
 お前さんのような例外もあるんだな。
 仕事に追われる公務員も居るのか。
 へぇぇ・・・初めて知ったぜ。衝撃の事実というやつを」

 「国道と県道を維持して、修繕するのが俺たちの仕事だ。
 植樹帯の管理や舗装の修繕、交差点の整備、橋梁の耐震補強工事なども
 担当する。
 ゲリラ豪雨の対策もやっているぞ。
 アンダーパス部(交差する鉄道や道路の下をくぐる部分)の冠水を、
 瞬時に察知するための「冠水感知システム」を設置している。
 整備の終わった交差点で渋滞が減ったり、歩行者が安全に歩いている姿を
 目にすると、けっこうなやりがいを感じる。
 捨てたもんじゃねぇなぁこの仕事もと、そんな風に感じている今日この頃さ」

 「落ち武者にしては、殊勝なこころがけだ」

 「聞き捨てならねぇな。誰が落ち武者だ!」

 「出世レースに敗れ、出先機関へ飛ばされれば、誰が見ても
 立派な落ち武者だろう。
 それともなにか?、まだ懲りずに、復活のための野心でも温めているのか?」
 
 「いや。いまのままで充分だ。
 と言うより俺も充分に疲れてきた。
 そろそろ早期退職をしてもいいな、なんて、ふと考え始めてきた」

 「早期退職する?。
 民間の企業じゃあるまいし、50歳になったばかりでやめちまうのか。県庁を。
 それじゃあまりにも勿体ねぇ話だろう」

 「そうでもない。定年まで居るよりはるかに条件がいい。
 お前。公務員の世界に、早期退職の制度があるなんて聞いたことが
 ないだろう。
 もちろん。自分から辞めたのでは一文の得にもならない。
 50歳以上の職員が退職勧奨を受けた場合、残りの年数に20%を掛けて、
 割増の退職金を受け取ることができる。
 いますすめられている改正案では、退職勧奨の年齢を45歳まで
 引き下げる予定だ。
 見返りとして、40%の割増をおこなうという。
 だが問題がある。
 退職勧奨というハードルが有る。
 自分から勝手に応募することができないという、厳しい制約がついている。
 それが民間企業と大きく異なる点だ。
 勝手に辞めることができない。そいつが公僕という、公務員の身分の
 哀しさだ。
 早期退職制度をあてにして、好き勝手に辞めることが
 できないようになっているんだ。
 通常の定年退職や、自己都合による退職には、割増の退職金制度は
 適用されない。
 だから45歳以上になった公務員は、自分がいつ退職勧奨の身になるのか、
 楽しみにしている。
 そんな連中が、本庁内にはけっこう大勢居るんだぜ」


(21)へつづく