オヤジ達の白球 16~20話
「ソフトボールの場合、専用背番号の指定があります※。
チームの監督さんは、30番。
主将は10番。コーチは31番と32番。スコアラーは33番と規定されています。
野球とは違い、背番号0も、00も登録することはできません。
背番号の上限は、スコアラーがつける33番までです。
ですから選手は、1番から29番までの範囲で背番号をつけることになります」
「おい。聞いたか、今の話し。
誰だ。松井の55番が欲しいとか、イチローの51番がいいとほざいているのは。
無理、無理。ルールで背番号は29番までと決まっているそうだ。
その数字の範囲内でもう一度、背番号を決めようぜ。
よかったなぁ。
おねえちゃんのナイスなアドバイスのおかげで、大恥をかかずに済んだ。
危機一髪で助かったなぁ、俺たち!」
もういちど、いちからやり直しだとふたたびテーブルの周りが賑やかになる。
「うふっ。無邪気なんですねぇ、男の人たちって。
背番号ひとつでと、そこまでムキになって競い合うなんて。
うふふ。でも、そんなところもまた、見ていて素敵です」
美女が祐介の目の前で、目を細めて嬉しそうに笑う。
(笑うとチャーミングだ。この人は!)
その瞬間。なんともいえない美しさを発見した衝撃が、祐介の脳裏を
突き抜けていく。
(いかん。いつもの悪い癖がでてきた。女難の相の前触れだ。
女の仕草に見とれてしまうのは、俺が、惚れこむときの前兆だ。まずいぞ)
要注意だ。いかんいかん、気をつけなければと祐介が厨房の中で
自分自身に言い聞かせている。
※近年のルールの改正により、現在では、2ケタの上限、99まで
背番号としてつけることができる。
ただし。0や00はいまでも使用できない。
(20)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 16~20話 作家名:落合順平