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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トラブルシューター夏凛(♂)1 堕天使の肖像

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 風圧で髪留めが飛ばされ、髪の毛が舞い上がり逆立ちしながら激しく揺れる。もう、濡れた髪の毛は風圧によって乾いてしまったに違いない。
 そして、夏凛の足が地面にふわりと羽根が落ちるように音もなく触れた。これはあの時と同じだ。
「さすがに死ぬと思ったぁ〜」
 銃声音が遥か頭上でしたと思った次の瞬間には、夏凛の足元のコンクリートは砕かれ銃弾が埋まっていた。
「あんなところから狙ってくるなんて反則ぅ」
 頭上ではマシーンが夏凛の部屋のベランダから下に向けて銃を構え獲物を狙っている。
「さすがはマシーン、目はいいね……あうっ!!」
 頭上から何発も連続で放たれる銃弾に踊らされる夏凛は、そのまま軽快なステップを踏みながらその場から逃げ出した――。

 白いバスローブを着た髪の毛ぼさぼさの夏凛が、深夜の街の涼しい空気を肩で切りながら駆け抜ける。
 後ろからはキリングドールが全力出力で無表情のまま追いかけて来る。
「確かに私は『最上級のトリプルSのマシーンを遣して欲しいね』って言ったけど、A級以上のキリングタイプは生身の人間が相手できないなんて小学生でも知ってるよ!」
 大声を張り上げた夏凛とマシーンの距離は徐々に狭まって行く。このままでは追いつかれるのは時間の問題だろう。
 深夜の住宅街を駆け抜け、大通りへと出た。この道は二四時間運行の駅ターミナルに続く大道で、深夜でも人や車の往来が多い。
 そんな人目に付く中、夏凛は左肩を真っ赤に血で染めたバスローブ姿という目立つ格好で走っていた。人目を惹いてしまうのは当然だ。
 歩道を駆け抜ける夏凛を人々は目を丸くして魅入って騒ぎ立てる。
 その後方では爆発音が次々と鳴り響いている。夏凛はその音に見向きもしない、爆発音の理由はわかっている。
 夏凛を狙うキリングドールは車道を突き進み接触した車を次から次へと吹き飛ばし大破させていく。
 炎上した道路を走る無表情のマシーンには傷一つ付いていない。
「こんな大騒ぎになっちゃって、どう言い訳しようか?」 
 頭を抱えて悩む夏凛の目に大型バイクにまたがり口をポカンと空けて遠くの爆発を眺める青年が目に入った。
 すぐさま、夏凛はバイクにまたがる男を突き飛ばし自分がバイクに乗ると、そのまま何も言わずにバイクをかっぱらって逃走した。残された男は口をポカンと空けたまま過ぎ去って行くバイクをどこまでも目で追っていた。
 盗んだバイクは改造が施されており、時速三〇〇キロメートルまで出せるようになっていた。
 アクセルは限界まで回され、エンジンは嫌な音を立てている。さすがに改造されているといっても、エンジンが耐久し得るかまでは保障されていないらしい。
 それでも夏凛は全速力でバイクを走らせ、大通りを抜け、裏路地を抜け、時には民家を抜けて、雑貨店の前まで来て、そこでバイクのエンジンを切った。
 後ろにはまだキリングドールの影はない。ずいぶんと距離を離したに違いない。
 閉められたシャッターの上に掲げられた看板には『ZIZZ』と書かれている。
 雑貨店ZIZZ――。日用品から非日用品まで豊富な品揃えを売りにしている店である。帝都のパンフレットにも『美男子の店長のいる店』として載っている有名店である。そして、その美男子店長というのが他でもない、夏凛の兄である時雨だった。