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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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トラブルシューター夏凛(♂)1 堕天使の肖像

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 両手で地面を付き、倒れるようにして夏凛はリヴァイアサンの攻撃を紙一重で避けることができた。
 蒼い顔をする夏凛。汚い地面に手を付いたことが相当ショックだったらしい。
 地面に手を付けたまま辺りを見回すと入口の小さな横穴が目に入った。
 すぐさま地面を蹴り上げ穴の中へ飛び込もうとした夏凛の後ろからは、リヴァイアサンが鋭い剣の並んだような歯で喰らい付こうとしている。
 穴の中に飛び込んだ夏凛の後ろでリヴァイアサンが、激突した頭で少しコンクリートを砕き頭の先を穴の中に押し込んできた。
 尻餅を付いたような格好になってしまっている夏凛の足に、リヴァイアサンの長く伸びだ髭が触れ、歯を何度もガシガシと鳴らしている。その口からは涎が垂れ流れ、臭い息が夏凛に吹き付けられている。
 獲物を目の前にしてリヴァイアサンは、これ以上進むことができないらしい。
 ほっと胸を撫で下ろした夏凛は、穴の中を進むことにした。
 穴の中は何一つ全く見えない闇だった。しかも、穴の縦幅が狭い為に夏凛は止むを得ず四つん這いになって穴の奥へと進んでいた。
 手や膝は汚れるし、暗闇なのでわからないが服もきっと汚れているに違いない。ただ、幸いなことに、まだ、変なものを手や膝で踏んづけてはいない。
 地面であるコンクリートは小さな砂でザラザラする感触がするもののそれ以外は比較的綺麗だった。
 恐怖心を感じながらも手探りをして、勇敢に前へと進む夏凛の手にぶよぶよとした感触のものが触れた。脂肪の塊のような物体が前に存在する。
「きゃあ〜っ!!」
 小さな穴に大きな夏凛の叫びがこだまする。
 夏凛は元来た道を全速力で逆送した。世界のどこかにハイハイのスピードを争う競技があったとすれば、今の夏凛は世界一の栄冠に輝くことは間違えないだろう。
 闇の奥に見える光――出口だ。
 幸いなことにリヴァイアサンの姿はなかった。
 穴の外に出た夏凛はマラソン選手がゴールした時のように両手を挙げ、心から喜んだ。
 最初に穴に飛び込んだ時は危機的状況にあった為に、その穴が何であるか考える余地もなかったが、今ならわかる。
 帝都の下水道全体に生息範囲を持つ巨大回虫コブダラケ。その回虫は細く伸びた身体に無数のこぶを持ち、口から吐く溶解液で下水道の壁に穴を空け、そこに巣を作る習性を持つ。夏凛の飛び込んだ穴は、そのコブダラケの巣だったのである。
 グロテスクなコブダラケを想像して、それに触ったかと思うと、もう死んでしまいたいくらいだと思う程だ。
 大きく首を横に振って、コブダラケのイメージ映像を頭から振り払った夏凛は気を取り直して、再び下水道の中を走り出した。
 こんなところで死ぬなんて自分のプライドが許さない。自分の美しい屍をネズミに喰われるなんて以ての外。
 夏凛は気合全開だ。