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俺はキス魔のキッシンジャーですが、何か?【第三章】第二話

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「お主たち。このまま放置でいいのか。自分の兄、抱っこプレイヤー、ショターゲット、そして許嫁じゃろ。それでいいなら、存在のあまりの軽さに大悟は自嘲するしかないじゃろうな。実に哀れな飼い犬じゃったわけじゃ。」
「そ、そんなことないわ。アタシは助けられたんだから、借りを返さないといけないわ。許嫁の立場はフィフティフィフティなんだから。いいわよ。大悟を連れ戻して、アタシに膝まづかせてお礼を言わせないとね。」
「お兄ちゃんにそんなひどいことさせないよ。お兄ちゃんにあたしのパンチラを見せたら食い付いて離れなくなるはずだよ。」
《まる、お姫様抱っこがないと血液循環、悪化する。これから寒くなる、しもやけ発症。痒さでだんまり。》
「あたいがショタイゴちゃんにしたことに責任があるです。憾痛の字。」
「みながそう言うなら仕方ないのう。妾にはメリットがないのじゃが、ひとハダカ脱ぐかの。」
 白弦は幼女制服を捲りあげて胸まで見せた。
「「《「脱がんでいい!」》」
「でも大悟がどこにいるのか、つるぺたはわかってるの?饅頭人居住区って、地獄にあるんじゃないの。ウサミミでも危険すぎて容易には近づけないわよ。」
「大丈夫じゃ。地獄を通らずとも簡単に行けるハズじゃ。この前のマンションから繋がっておるわ。」
 こうして、五人は黒霞雨のマンションに向かった。

 黒霞雨のマンションは誰もいなくなっていた。白弦の風魔法で屋上に上り、そこから階下に降りて行く。黒霞雨のいた部屋のフロアに来た五人。
「さあ、ここからどう行けばいいのよ。つるぺたの責任で道案内をしなさいよね。太平洋にカヌーを手こぎしてアメリカに渡るような気持ちでいるんだからね。」
「微塵も期待されてないのう。ここまで来れば強い魔力が出ている場所が居住区への入り口と踏んでおったが、黒霞雨のヤツ、魔力ノイズキャンセラーを使用して、妨害しておるようじゃ。」
「これじゃ、どの部屋が居住区への通路かわからないよ。100部屋以上あるんだから探し切れないよ。」
 桃羅は眉根を寄せて腕組みをした。
「それって、アタシの桃羅ノイズキャンセラーの饅頭人版ってところなのかな?」
「そのようじゃのう。魔力をバリアに変換させているところは同じじゃの。そういう能力はその個人の性格によるから、黒霞雨と誰かは類友かもしれんのう。どちらもかなりの使い手じゃ。」
「そんなに褒められたらお子様ランチを作ってあげたくなるわよ。」
「いらんわ!第一褒めてなんかおらんぞ。むしろ『性格の悪さ』殿堂入りを推薦したいぐらいじゃ。」
 ここで桃羅が大いに反応した。
「それだよ!あたしの桃羅ノイズは超絶性悪の愛人二号には効かない。桃羅ノイズを張り巡らせば魔力と共鳴するはず。そこで愛人二号にノイズキャンセラーを使わせたら、ターゲットの部屋だけ片方のノイズが残る。その部屋が居住区への入り口だよ。」

 こうして、発見した通路から居住区への進路を得た桃羅たち。
「饅頭人居住区って、アタシは入ったことないけど、つるぺたはどんなところか知ってるのよね?」
「そちにつるぺたと呼ばれるのは納得いかんぞ。一度身体検査してどちらが真のつるぺたか勝負する必要があるのう。妾が知ってるのは屯田兵が開拓していた頃だけじゃ。当時は地獄の辺境地で、誰も住んでいない荒涼とした場所だったんじゃ。今はどうなっているのか妾にもわからん。」
「なんだか、すごく怖そうな気がするんだけど。こうなったら、愛人二号を先鋒に任命して防波堤になってもらう必要があるね。その自己犠牲精神だけは褒めてやるよ。」
「まだやるなんて言ってないでしょ。そんな大事な仕事はリーダーが全うすべきじゃないの。」
「それはそうかも。じゃあ、先導者は決定だね。ねえ、リーダーつるぺたさん。」
「いきなり妾なのか。選考過程に納得いかんのう。」
 目を吊りあげて両手を腰での抗議のポーズの白弦。幼女の決めポーズはマニア必見である。
「まあまあ、そう言わずにリーダーなんだから。今からお兄ちゃんに出会った時のシチュエーションを想像してみなよ。あたしたち、レスキュー隊がお兄ちゃんの目の前に現われた時、お兄ちゃんの目に映るのは、先頭を歩く女子になるはずだよ。そこでインプリンティングの理論からすれば、マザー認定されるのは、つるぺたになるはずだよ。」
「たしかにそういうシミュレーションが成立するのう。了解した。妾が先鋒を務めるぞ。」
(つるぺたがいちばん前でもお兄ちゃんの目線からすれば、二番目にいるあたしと目線が合うはずなのに。やっぱり頭脳は幼女レベルだね。)
「おい大悟妹よ。なんだかニヤケているように見えるがのう?」
「な、なんでもないよ。じゃあこの態勢で行こうよ。」
 
 白弦を先頭にして、二番三番は桃羅と楡浬。その後ろに騙流と衣好花が並ぶという遊園地列車。そのドラクエのフィールドキャラ小隊は、通路から居住区へ足を踏み入れた。
「ここが饅頭人の住んでいるところ?これじゃ、人間界と変わりないよ。」
 桃羅たちの目に映ったのは、都会の駅前のような商店街の街並み。でも大きな違和感がある。
「太陽がなくて薄暗い。街灯で明るくしてるようじゃ。そこは地獄と同じじゃな。」
「街を歩いているのは饅頭人ばかりだね。甘い香りが漂ってるけど、その数が多くて、甘さが充満して、むせかえりそうだよ。」
 騙流はダルマを口に当てており、衣好花も手で口元を押さえていた。
「さて、大悟がどこにいるのか、探す必要があるんじゃが、その前にやらなきゃいけないことがもう出てきたようじゃな。」
 10人の饅頭人が白弦たちの前に現われた。『ううう』という唸り声を上げている。
「こやつたち、妾たちを狙っておるようじゃの。」
「そんなこと言ってる前にもう襲われたよ!」
 桃羅はノイズで、からだをガードしている。騙流はダルマを固めてバットを作り、饅頭人を打っている。衣好花もワンランク軽くした剣を振り回して守っている。白弦は風魔法で、饅頭人を寄せ付けない。『饅頭コワい!』と叫んで逃げ回る楡浬以外はさかんに防御している。
饅頭人は全員がいったん集まり、何事かを相談するような素振りを見せた。その直後、楡浬たちへの攻撃をピタリと止めた。さらに丸い手に何かを手にしている。それを白弦たちに示した。
「これは饅頭じゃないか!いったい何をしようというのじゃ。」
睨みつける白弦に対して、饅頭人は軽く手を上下に揺らした。
「まさか、これを食えというのか。戦闘して、ちょうど腹が減っていたところじゃ。よだれタラリ。ガツガツ。うまい。甘さが適度じゃ!」
饅頭を食べ始めた白弦を見て、楡浬以外の全員が饅頭を口にし始めた。
「これはうまい。止まらない、やめられない、饅頭デヴィになっても構わんぞ!」
楡浬だけは『饅頭コワい!でもこの光景見たことあるわ。』と言って、貪る仲間の後ろでうずくまっていた。
饅頭人は次々と饅頭を白弦たちに振る舞う。
「わんこ饅頭じゃ!ブロイラー饅頭じゃ!」
両手に饅頭を持ち、口は饅頭が溢れんばかりになっている白弦たち。からだが饅頭のように大きく丸くなっていく。
「満腹じゃ。もう動けないぞ。」
すでに楡浬以外が動けなくなっていた。
『がああああ。』