短編集34(過去作品)
もう一つ、私が忘れていた何か。それはもう一人の私……。
この状況を冷静に見つめるもう一人の私の出現に、それこそが、真の自分だということに気がついたのだ。
頼子がいつも現実的なことを考えているように見えるのは、頼子の本質を見ているからだ。人によっては頼子をまったく違う性格だと思っている人もいるかも知れない。誰もが持っている二面性、それは私にもあったということだ。性格が途中で変わるのではない、その人の中の表に出てくる性格が時々入れ替わるだけなのだ。本質的に変わっているわけではない。
しかし、そのことに予感があったのは以前から気付いていたことだと思う。
初めて失恋を体験した私……。自分の中で悲劇のヒロインとしての女性が出来上がりつつあった……。
( 完 )
作品名:短編集34(過去作品) 作家名:森本晃次