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タイトルは終わってから考えます

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今、まさにそのスタジオの、部屋番号『19番』の前でボクはドアノブに手を伸ばしたまま固まっている。
手のひらはまだそのドアノブを包んでもいない。
だって、でも、多分ここに居る事が出来たヒトなら、
きっと僕の気持ちが分かるはずだ。

『今までとは違う世界への扉』というモノは、実は世界の至る所に存在する。
昨日に続く今日が連続する時間の結果だとするならば、
それを超えて一枚扉の向こうへ行ったなら、
そこは未知の世界であり続く明日は予想だにつかないものになるはずだ。

世界と世界を隔てるのは空間で、
人間にはきっとそれを感じ取る本能がある。
本能は無闇にそれを感じ取るのでは無く、
きっかけだけはきっとある。
それがわかりやすいときには、ヒトはそれにきっと気づくし、畏れを抱く。
今ここでボクが感じているのはそんなモノで、
畏れで、
恐怖で、
きらびやかなばかりの夢で、
跳ねて弾けるような希望そのものだ。

小さくミュートされてドアをすり抜け伝わり来るのは、
ビートで、リズムで、うねりで、つまりはドラムソロだけで紡ぎ上げられる、圧倒的で掛け値無しの『グルーヴ』だった。

ボクは、その響きに魅せられたまま、
畏れに心を硬くしつつも、
ドアノブを握ろうとしている手のひらにどうにかと力を込めた。

包み込まれた銀色のドアノブをひねり、奥に扉を押してみる。

その瞬間、

圧倒的だったグルーヴが消滅し、シンバルの音が引き潮のようにすうっと引いていき、

小さなスタジオ部屋の中から、荒い息づかいだけがボクの耳に届いた。

「やあ――――ようこそ」

そんな彼のささやきは、

ボクにとって異世界への扉そのものだったということに、

ボクはもう少し後になって、気がつくことになるのだが――――

<続>