隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
それを聞いて、知子と愛音は、博之とひとみ先生の関係を、詳しく知っていそうだと気が付いて、少し緊張せざるを得なかった。
「そうなんだけど・・・」
「ちょっと待って! 先生と何か関係続けてたの? うまく内緒にして」
「関係って、何もないよ。変なこと言うなよ。この娘さんとは大人になってから、知り合ったんだよ」
「そう。で、先生は今どうされてるの?」
恵美莉は、座敷の縁に腰掛けた。
「ああ、7年ほど前に亡くなった」
「・・・そう。残念だったけど、お葬式は行った?」
「うん」
「じゃ、なんで私には連絡しなかったのよ」
「え? ああ。亡くなる直前に再会したからで、誰にも連絡してなかった」
「そんな突然に。でもキッドに連絡あったってことは、先生とは連絡が着く状態だったんでしょ」
「いやいや、中学の時から、一度も会ってなかったよ」
「娘さんが大人になってから知り合ったって、それは偶然だったの?」
恵美莉は眉間にしわを寄せて、小声で話した。
「そうだよ。お前賢いから、どんどん変な想像が膨らんで行ってるよ」
「それに、『パパ』ってどういうこと?」
「それは・・・」
「それは、私が冗談で言ってたら、木田さんが満更でもない顔されるから、その呼び方で定着してしまって。深い意味はないです」
と、笑いながら愛音が博之を、いいタイミングで援護した。
「愛ちゃんと、もし変な関係だったら、私がここにいるはずがないし」
知子もさりげなく、失笑して口を出してみた。
「そうですか。すみません、変なこと言って。でも、先生の娘さんと会えるなんて、驚きです」
「あ、どうも。ご挨拶が遅れまして」
愛音と恵美莉は笑いながら、深々と頭を下げた。
「もうもうもう、恵美莉、もう変なこと言うな」
博之は立ち上がり、靴を履いて、恵美莉を出口に誘導した。そして家族に挨拶をして、店から送り出したのだった。
「ごめん。先生との関係の深さ、気付かれそうなこと言っちゃって」
「大丈夫さ。あの頃のこと思い出したいんで、恵美莉が覚えてることとかあったら、また教えてよ」
「そうね、その話だけで十分飲めそうね」
「じゃ、また連絡させてもらうよ」