隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
「両親も1年通して計画的に作業してるんで、突発的なトラブルには結構柔軟に対処できるんです」
「うちの田舎の状況から想像して、猫も手も借りたいのかと思ってたけど」
「お父さん、いろいろと手広くやってきたから、協力してくれる人も多いんです」
(行き当たりばったり、お天気次第というようなことじゃなく、しっかりしたお父さんだったんだな)と思い、博之が想像していたような農業ビジネスでも、心配なさそうな気がしてきた。
「でも、旦那さんは怒ってなかった?」
「意外にそうでもなかったです。私が退職して実家を手伝い始めても、旦那もすぐに退職して合流するわけじゃないので、旦那的にはあまり関係なかったみたいで」
「それじゃ、どうして反対されてたの?」
「私がいけないんです。ずっと家では仕事の愚痴ばっかり言ってたから、そんな職場に私を長く置いときたくなかったらしくって」
「そうだよな。お前には無理ばっかりさせてるもんな。あの3人の世話、正直なところ、俺には無理かも知れないもん。でも、もうホントにサポートするだけでいいから、全部3人にやらせて、分からないところをフォローするだけでいいよ」
「それじゃ、木田さん困りません? きっと中途半端な書類だらけになりますよ」
「そうなったら、3人に返すから、そこでちゃんと出来るように教えてやって。暫くは、彼女らのミスは大目に見るから」
「ありがとうございます。でも昨日も旦那と2時間ぐらいバトッたから、疲れちゃいましたよ」
「お母さんの電話のあとから2時間?」
「ええ、旦那が帰宅したのが、10時半だったんで、それからご飯用意して、話し始めて1時くらいまでかかりました。クリスマスのことでも喧嘩してたし。それに旦那、体調が悪かったみたいで、『うんうん』ってあまり喋らずに聞いてくれたから、逆に楽でしたけど」
「ああ疲れてただろうに、申しわけないな」
「なんか、口の中にデキモノがいっぱい出来て痛いらしくって、かわいそうなことになってたんです」
「口内炎か何かかな?」
「だといいんですが、アトピー持ちなんで、粘膜系弱いんですあの人。その話もしながら、結局寝落ちするまで、話し合ってましたから」
「そんなに。ゴメンな。俺も昨日はハラハラして、3時くらいまで起きてたけど」
「そんなに寝られなかったんですか? 安心してくださいって言ったのに」
「そうだったけど、この2〜3日、小原のことしか頭になかったぐらいだよ」
「・・・・・・?」
「最近じゃ、一人の女性のことばっかり考えるようなこと、なかったもんな」
「よっしゃー!」
小原は意味不明なガッツポーズをとった。