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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2

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 今年最後の出勤日、博之は不安を抱えながらの出勤となった。運命は常に二つに一つ。YESかNOか。中間はない。もちろん気がかりなのは。小原の報告だ。

「木田さん!」

     V(ブイ)!

事務所の入口で、小原が指を二本立てたのが、朝一番の挨拶だった。その後、近寄って来ることはなかったが、もうそれだけで、博之にはすべて意味が解った。

 そして朝礼で、30名ほどが起立している中、博之はいつもどおり話した。
「はい、それでは今日の予定は以上です。何か皆さんからの連絡はありますでしょうか?」
小原が少し前に出て、『私が言いましょうか?』というようなジェスチャーをしたが、博之は軽く人差し指を立てて制した。
「えー、実は今日で退職予定だった小原主任があと少し、残ってくれることになりました」
皆から小さな声で、「おおー?」というどよめきが起こった。
「2月20日まで延長させてもらいます」
と小原が言うと、
「主任には私からかなり無理を言って、退職時期を延期してもらうようにお願いしたところ、今朝ようやく、OKの返事をいただきました。今まで管理部門の事務作業の責任者でしたが、それは今日までとし、来年から引き継いだ方へのサポートに徹してもらいます。まだ分からないことがある方は、あと少しのチャンスですので、今のうちに聞いて勉強してください」
小原の後輩3人は少し強張った表情になったが、小原を見て軽く会釈するようにコミュニケーションをとった。
「それと、丸川係長の方も来月で退職されますが、有給(休暇)取得されますので、出勤は今日が最後となります。チームの方は、今日のうちにすべて引き継いでおいてください」
それを聞いても皆は沈黙だった。

 博之は昼休みまで小原とは話をしなかった。昼から新映像チームと取引先で作業する必要があったので、昼休みしか話すチャンスはない。しかし期待通り、昼にタバコを吸い終えた小原が、今日もやって来た。
「ありがとう」
「いいえ、これでやっと木田さんに安心して、年末年始を過ごしてもらえます」
「本当にそうだ。ホントに本当にありがとう」
両手を合わせて博之は言った。