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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2

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「“お前”とか言ってごめん。なんか、俺に素直に話すようになってくれて、びっくりした」
 博之は、小原とは全然気が合わないと思っていた。20歳ほども違うので、当たり前だが、主任に昇格させても、仕事よりプライベートを優先するし、自分可愛いアピールをする姿に、腹が立つこともあった。しかし結婚してからは予想外なことに、家庭があるからというような言いわけを一切したことがない。残業でも不平を言うようなことはなくなった。

「やっぱり、退職ってなると、迷惑かけちゃいますからね。旦那は辞めた後のことなんか、放っといたらいいじゃないかって言ったんですよ。それが普通かもしんないですけど、それには少し腹が立ったんです」
「ふうん、責任感強いんだな。そういう小原にしか出来ないこととか、思い付かない発想とかあるしね。それがなくなると、すごく残念だよ」
「だからせめて引き継ぎだけは、あの子ら(後輩たち)にしっかり教えとこうと思ってるんですけど、『やる気あんのか!』って言いたくなります」
「そういうもんだよ。女子だけじゃなくって男でも仕事、何しに来てるんだってヤツばっかりだよ」
「ホントそうですよね。私もその一人だったんですよね。それは分かってたんですけど、男の人でさえそうなんだから、私一人頑張るのも嫌で、木田さんの言うことも『めんどくさいなー』とか思ってましたけど、今あの子らに教えようとして、木田さんの気持ちが、よーく解ったんです」
博之は、裸電球に照らされる小原の顔をしっかり見て、頷きながら「ふむ、ふむ」と聞いていたが、彼女は時折、視線を逸らして話していた。
「部下に責任を全うさせたいからなのに、みんなは仕事を押し付けられてるとしか、考えたくないんだよ。自分のやるべきことだって解ってるはずなのに。俺が言ってることが間違ってるって、みんなで言い合うと安心するんだろ。でもその中から、ホントに自分に大事なことだって、解るヤツが出て来て、他より出世して行くんだ。小原は今そういう人になって来たんだけど、退職が決まってるからスゴク残念だなぁ」
今度は小原も視線を合わせ、「うん、うん」と力強く頷いて聞いている。
「はあ、木田部長のそういう話よく分かります。困ったことがあって相談したら、木田さんはすぐ解消してくれますもん。他の人だったら『それは難しいな』って言うだけですし、何の助けにもならない。だから仕事のことは放っといて、飲みに行って忘れとこうって人ばっかり」
「これからも相談に乗るから、あと5ヶ月ないけど、俺を助けてくれる?」
「はい、精いっぱいやります」
「信頼してもいいか?」
「はい。信用してください」
二人は視線を合わせて、しっかりと確認し合った。