隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
「それは可哀そうに。スロットで負けたんじゃないか? 旦那さん」
「そうみたいです。で、食事中もほとんど喋らない感じでした」
「そんなに大負けしたのか?」
「いいえ、私がちょっと不貞腐れてたからだと思います」
「で、プレゼントもなし、何もしてもらえないで落ち込んでるわけか。仲良し夫婦だと思ってたのに」
悲しそうな顔で、頷く小原。博之は(この目線に、男は弱いよな)と思ったが、周囲に誰もいないのをいいことに、抱きしめるわけにもいかず、
「じゃ、今日はお前から甘えて、仲直りしてみろよ」
「いいです。それはイヤです」
「なんで?」
「いっつも甘えられて、無視してるのに、自分から出来ないです」
「お前も甘えられないタイプか。なんで無視するの?」
「露骨に嫌がったりしてないですよ。聞こえないふりしたり、話を逸らしたりしてる程度です」
「そんなことするから余計に甘えるんじゃないの? どれくらい・・・全然してないの? あれ」
「全くというわけではないですけど・・・」
「でも新婚さんでしょ」
「もう月に一回くらいです」
「ええー? 少な! マンネリしてしまってるのか? じゃ、変わったことしてみるしかないな」
「ええ? どんなことですか?」
「変なことって意味じゃないけど、ちょっとコスプレとかやったことない? お前、女子会でよくコスプレパーティみたいなことしてたでしょ」
「はあ、旦那は興味ないと思います」
「そうかな? 俺はむしろ“あり”だけど・・・じゃ、思い切ってエロ下着とか?」
「ガーターベルトぐらいなら、経験ありますけど。でも、どうせ脱ぐんなら一緒じゃないですか」
「ガーターベルトは脱がなくても出来るじゃない。パンツの前に着けるのが正解だろ?」
「ああ、そうですね」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「何の話してるんだ? 俺」