隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
第16章 ご褒美
「今日、愛ちゃんに電話してみたんだけど、まだ彼氏、家にいるみたいよ」
知子は愛音の自宅を訪問したことで、急に親近感を持ち、自ら電話をかけられるようになっていた。
「ああ、そりゃ同棲してしまって、すんなり家に帰れないだろうな。親も驚くし」
博之は知子に淹れてもらった紅茶を、ダイニングテーブルで飲んでいた。
「話し合いに立ち会った方が、いいんじゃないですか?」
「そうだな。ちょっと殴られたみたいだし」
「そうらしいわね。 またDV?」
「あいつも男見る目ないな」
「あなたみたいな人に出会えればいいんですけどね(笑)」
「なんだ? 皮肉っぽく聞こえるぞ」
「いいえ、愛ちゃんがあなたのこと、ステキだって言ってましたよ」
「そんなこと言ってた? この前、苦手って言われたけど」
「あ、そう言えば面倒くさいとも言ってたわ(笑笑笑)」
「だろ」
「クリスマスはどうする気かしら」
「それまでには、出て行ってもらうつもりらしいけど、彼と一緒に過ごす気はないって言ってたから」
「つい2〜3ヶ月前まで、ラブラブだったでしょうに。どうなるか分からないものね」
博之はその言葉を、しんみりと受け止めて聞いていた。(2〜3ヶ月か。それまでは結婚したいぐらい好きだったのに、今はもう家を出て行ってほしいくらい嫌いになるなんて。小原とも2〜3ヶ月で急激に仲良くなったけど、好きになってくれるほどじゃないだろうな。昨日のバーじゃ、かなり過激な会話したけど、あの後、もし・・・)
「秋日子の模試の結果、見てやってくれる?」
「もし? あ? あ、模試?」
知子は席を立って、階段の下から、大きな声で、
「あき! パパに模試の結果見せに来なさい!」
「はーい」
秋日子は嬉しそうに笑いながら、大きな封筒を持って、階段を下りて来た。