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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2

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『出来る限りのこと』とか『やるだけやった』というのは全部言いわけだ。本当にがんばってるヤツというのは、『やってもやっても追いつかない』と言うもんだと、博之は知っていた。
「お前、仕事を何だと思ってるんだ? お前がルーズなのはよく分かったけど、部下にまでそんな指導をしてるのか?」
「ちゃんと指導してますよ」
「その“ちゃんと”はどんなことなんだ!? たとえ土曜でも、無断欠勤だぞ。しかも部下二人を巻き添えにして」
「土曜に休む権利はないんですか?」
「権利はあるけど、業務命令で出勤になってるんなら、それに従うべきだろ。お前に出勤日を決める権限はない」
「分かりました」
そう言うと丸川係長は、席を立ち部屋を出て行った。博之は頭をかいた。この件は社長に報告するしかなかった。

 社長室で、デスクに腰掛ける社長に、博之は立ったままで話をした。
「・・・そうしてくれれば、なんとか休日出勤命令も、取り下げてしまおうと思ってたんですが、あんな態度では、社長にも報告するしかないと思いまして」
「そうか。よくやってくれてたんじゃなかったのか?」
「そういう報告もしてきましたけど、私が管理してケツを叩かないと、予定なんかほとんど見てないようですから」
「でも、そんなんじゃ、仕事は任せられんな。人手不足だけが原因じゃなさそうだな」
「その通りです。でも代わりが今はいないですから」
「辞めると言ったわけじゃないんだろう? 続けさせるしかないじゃないか? わしから強く言ってやろうか? 責任者の自覚を持てって」
「それは何度も言いましたけど、社長からもお願い出来ますか?」