隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
第14章 浮気心
「やっぱりお前は、楽しい過去持ってるな」
「木田さんこそ、面白い話いっぱいあるじゃないですか」
博之と小原はシャンディ・ガフとドッグ・ノーズを美味しく飲めていた。
「でも、結婚してからは本当に、浮気とは縁がないんだぞ」
「でも結婚するまでは、激しかったんでしょ」
「結婚する前だもん。その時付き合ってる相手と結婚するとは限らないから、結婚までの過程で、いろんなことが、いろんな人とあっただけじゃないか」
「そういう理論って男の人っぽいですね」
「じゃお前だって、常に結婚相手として考えながら、相手と付き合って来たか?」
「はい」
「え?」
予想外なことに、はっきりと言い切った小原の表情に博之は驚いた。
「その答えは、『YES』です」
「うそー。じゃ何人と付き合って来た?」
「うーんと、今の旦那さんで10人目でした」
「そうなの? お前にしちゃ少なくないか?」
「失礼ですね!(笑)最初の頃は、ただ好きな人と楽しい日々を送ってただけですけど、実家を継ぐことを決めてからは、養子に入ってくれる人を探す日々でしたから」
「ああ、そういうことか。それで相手と相談しながら付き合ってたのか?」
「ええ。でも養子OKなんて言ってくれる人、まずいませんでしたよ」
「そうだろうな。必ずしも、結婚しようと思って付き合い始めるわけじゃないから、そこまで考えられないだろうな」
「だからこっちは真面目に、当たりが出るまで、探し続けるしかなかったんです」
「で、旦那さんが10人目だったのか。最初からすんなりOKしてくれた?」
「旦那は長男だったんですけど、父親が家を出て行ってしまって離婚になったらしくって、継ぐ必要がなかったんです。だから旦那を逃がしたら、次のチャンスはないと思って結婚しました」
「え、それ妥協?」
「違いますよー! ちゃんと見極めてこの人しかいないって、信じられたからですよ」
「だよな。でも複雑な事情だったんだな」
「木田さんは、何人彼女いましたか?」
「ええー。言いたくないな。(笑)」
「私が言わされたのに、言えないか!」
「へへへ。結婚するまでに正式に彼女って呼べる人数は8人。お前より少ない」
「でも、正式じゃない人もいるってことですね?」
「それは、お前もな」
「そうですね。いろいろいますね」
彼女は段々、いい顔になって来た。