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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2

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「パパも結構、甘いもの好きですね。いつもケーキとかばっかり注文してるし」
愛音は立ち上がり、今度はピアノの椅子に腰かけた。
「でもあの人、コーヒーには、お砂糖入れないでしょ」
「ですよね。変わってるって思います」
「それはね、ケーキの味は変えられないけど、コーヒーの味で調整が効くからですって」
「へっへへ、そんなこと考える人、面倒くさい」
「いつも人のことばっかり考えて、相手に合わせて無理ばかりしてる人だから」
「そうですね。そう言われてみると、パパらしい」
「あの人がパパで、どう思った?」
「ふふふ、初めて会った時、スマートでよかったって。中年太りだったらとか心配してましたから」
「会うの勇気要ったでしょ」
「はい。でも母が・・・もう時間が残されてなかったから」
愛音は鍵盤を指でなぞった。そして。

(♪)ド・ファーミファソーー・ララソラーー・(♭シ)(♭シ)ラ(↑レ)ーー(↑ド)・(♭シ)ラミファソーー・・・

「それ『別れの曲』ね」
「はい。パパが中学の時、母に弾いて貰って、感動したって言ってました」
「あんな人で、よかった?」
愛音は知子の方に向き直った。
「はい。とても素敵な人です。知子さんには逆に、ご迷惑かけちゃったと思って、悪いと思ってます」
「それはびっくりしたわ。それまでにお母さんのことは少し聞いたことあったのよ、でもまさか子供を作るような関係だったなんて、びっくりよ」
「本当にすみません」
「ははは、あなたが謝ることじゃないし、お母さんもよく一人で育ててこられたなって、頭が下がる思いよ」
「ありがとうございます。知子さんと一度、ゆっくりとお話しないとけないと思ってたんですけど・・・」
「それは私も同じだけど、これからは仲良くやっていきましょう」
「こちらこそお願いします」
「お腹の赤ちゃんのこともあるしね。これから大変だけど、私たちを頼ってくれていいから」


 その晩、拓君が帰宅すると、愛音は食事を準備して、ソファに寝転がる拓君に声をかけた。しかし彼はゲームの電源を入れた後、返事をしなかった。ダイニングテーブルの上に、ご飯と野菜スープ、豚肉の炒め物を並べたまま、愛音は怒った表情で、彼の様子を見ていた。そのまま15分くらいだろうか、頭上の蛍光灯がビーンと唸るのを不快に感じながら、その間が愛音にとって、婚約解消を切り出そうと決心するには、十分な時間だった。