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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2

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「保険の先生がね、小学校当時のことを、根掘り葉掘り聞き返すのかと思って、すごく嫌だったんだけど、小学校の先生と違って、現在はどう思っているのかとか、いやな気分になった時、どうしたら気が晴れるのかとか、今の心のケアに徹してくれたんだ」
「そんな落ち込んだ時は、どうしてたんですか?」
「バスケの練習で思いっきり走り回れば、その間だけは気が紛れてたような気がする。でも本当に嫌だったのは、ひとみ先生に誤解されることで、それが一番悔しいって答えたんだ」
「そうか、過去の事より、今好きな人の事で悩むんですよね」
「カウンセリングで打ち明けたのは、あの事件を引きずっているということじゃなくて、むしろ無理やりキスされたことなんかもう忘れて、その相手の子とも普通に会話出来るぐらいだったから」
「喉元過ぎたら、そんなもんですよね。私も解かります」
「お前もそんな経験があるってことだな」
「ちょっとヤバイ話が。それはまた機会があれば」
「よし、楽しみにしとくからな。ま、飲んで、飲んで」
「はい」
 小原は、『ドッグ・ノーズ』を普通のビールのようにぐいぐい飲んでいる。
「で、先生の続きは?」
「そう。そしたら保険の先生から、ひとみ先生が俺のことを、如何に心配してくれているかを教えてもらって、少し心を開くことが出来たような気がして」
「保険の先生も一応プロですね。それでひとみ先生は何か変わりました?」
「周囲から守ってくれるようになったと思う。特にバスケ部の練習にも、見学に来るようになったりして」
「そういうことか。じゃ、もっと二人のコアな進展があったんですね?」
「頑張って、早く彼女作りなさいって、よく言われたよ」
「それだけじゃないでしょ?」
「いや、初めはそれだけ」
「そうそう。まだ始まりに過ぎないですよね」

**********
 博之が気になる女の子は決まっておとなしく、決して自分から積極的には迫って来ない女子に限られていた。クラスやクラブの女子から追い掛け回されて、取り巻く女子をはぐらかすために、
「俺は、ひとみ先生が好き」
と公言していたので、どんどん先生のことが好きになって行った。
「もてるんだから、彼女作りなさい」
とひとみ先生に言われても、逆にそんな時にも、
「先生のことが一番好きだから」
とまで言ってしまうほど、博之は先生に狂ってしまっていた。
**********