隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2
なんだかんだで、博之はカナコのことをどう思ってるんだとか、誰のことが好きなんだとか、ヌマちゃんと遊ぶなとか。それはそれは博之にとって、嫌ーな時間だった。
帰ろうともがき、煮え切らない博之の反応に、マキコは無理やり博之を押さえ付けて、カナコに思いも寄らないことを言った。
「キスしろ!」
腕を掴んでいた女子たちは、博之が強くもがいたので、覆いかぶさるように押さえ付けて来た。博之は床に倒され、身動き出来なくなった。そこへカナコが真っ赤になりながら、博之の顔に近付いてキスしようと試みた。
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「ええ! 犯されたようなもんじゃないですか?」
小原は急に背筋を伸ばすように姿勢を変え、両手でタンブラーを掴んだまま、真っ直ぐに博之を見て言った。
「まったくその通り。でもさすがにすんなり、受け入れられないよ」
博之は、右手の中指と親指でタンブラーを摘まむようにぶら下げて、背もたれにもたれかかった。
「でも、されちゃったんですか?」
「ああ」
「ファーストキス?」
「うーん・・・必死で抵抗したから、完全にされちゃったわけでもなかったような・・・」
「でも初めてですよね。」
「うー?・・・幼稚園の時のは、カウントする?」
「それは微妙」
「幼稚園で仲のよかった、せっちゃんとキスしたことあるから、そっちがファーストキスと信じたい。(笑)でも微妙だな」
眉間にしわを寄せて言った。
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初めのうちは首を左右に振って、カナコのキスを避けていた博之だったが、完全に唇が顔に押し当てられてくると、自分の歯が当たって、相手の顔に怪我させてはいけないと思い、首を振るのを諦めた。それでも口を離そうと仰け反ったり、顎を引いて自分の唇を噛み締め、必死で防御した。
暫くカナコの中途半端なキスは何度も繰り返された。そうしてやっと唇を離してくれたと思ったら、今度はマキコが博之に吸い付いて来た。
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「これは予想外だったんだ」
「ひょっとして皆に廻されちゃったんですか?」