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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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隠子の婚約+美人の退職+愛娘の受験+仕事の責任=幸せの1/2

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「この中の空気を吸って・・・」
紙袋を膨らませ、愛音の口に押し付けた。
「愛音! ゆっくり吸って、息吐いて。 ひー、ひー、ふーー」
(それじゃ出産の時みたいじゃない)と知子は思った。
博之が呼吸のペースを静かに繰り返すと、愛音もその速度で、ゆっくりと呼吸しだした。
「大丈夫か?」
まだ、愛音は返事をしない。
「私、表で救急車を待ってる」
知子が外に出て行った。
そうして5分ほどすると遠くから『ピーポーピーポー』という音が聞こえて来たが、その音が消えたので、知子が救急車に合図したのが分かった。
すぐに救急隊がドカドカと家に入って来て、ソファの側に駆け寄った。
「どうされました?」
「飲みすぎで、気分が悪くなったんですが、今、過呼吸みたいな症状になってて。意識も朦朧としてるみたいで」
「もしもし、聞こえますか?」
救急隊員は、愛音の肩を叩いて話しかけた。愛音は強く目を閉じ、袋を口に当てたままで頷いた。


 愛音が運ばれた病院のロビーのベンチで、博之は眠気に襲われ、目を瞑ってぼんやりと、小原のことを考えていた。
(明日の忘年会では、隣に座って一緒に飲みたいな。・・・・・・でも、露骨に部下を隣に座らせると、セクハラになってしまう。・・・・・・いや、彼女も日頃の感じだと、俺の側に来る気がするけど・・・・・・そうなっても、二人っきりってわけじゃないから、差し障りのない話題しか無理だろうな。・・・・・・もし社長の側だったら、ずっと仕事の話になるな。それイヤ・・・)
「あき。眠いでしょ。車で寝とく?」
知子の声で博之は、ふっと、意識が現実に戻った。そして、今晩何時に床に着けるのかまったく分からないこの状況で、自分は何て無責任なことを考えているのかと、我に返った。
「ううん。お姉ちゃんが戻って来るまで、ここで待ってる」
「もう12時回ってるのよ」
「じゃ、あき。眠くなったら寝ていいから、無理しないでここで横になってなさい」
「こんな椅子で寝るのダメじゃない?」
「どうせこんな時間に、誰もいないから。いいよ」
秋日子は、知子の膝を枕に横になった。